
旅館・ホテルの魅力を発信する手段として、動画を活用する動きが広がっている。You TubeショートやInstagramリールに加え、近年は中国や東南アジアで人気の高いRed Note(小紅書)を使った発信も注目を集めている。静止画よりも臨場感があり、旅の情景や館内の雰囲気、人の温かさが伝わりやすいのが動画の強みだ。海外の旅行者にとっても、映像は言葉を超えて理解できる効果的な手段となる。
一方で、「動画制作は難しそう」「インフルエンサーに頼まないと効果がない」「高額な制作費をかけなければ良い映像は作れない」と感じている経営者も少なくない。しかし、いまでは生成AIの技術が進み、スマホやタブレットさえあれば、誰でも手軽に制作・配信できる時代になった。動画づくりは、思っている以上に身近な取り組みへと変化している。
初心者が動画を始める際に大切なのは、宿のすべてを見せようとせず、一つの場面に焦点を当てることだ。「朝の湯けむり漂う露天風呂」「料理を盛り付ける瞬間」「女将の一言」など、印象に残る場面を選ぶと良い。テーマを絞ることで構成が明確になり、視聴者の記憶にも残りやすい。
撮影はスマホで十分だ。自然光を生かせば明るく柔らかな映像が撮れる。長時間の撮影は必要なく、数十秒のカットをいくつか撮っておくだけで、編集素材としては十分である。
撮影後は、編集アプリを使って1本の映像にまとめていく。「CapCut」や「VN Video Editor」などの無料アプリは操作が簡単で、映像を選ぶだけで音楽やタイトルを自動的に挿入してくれる。テンプレートを活用すれば、初めての人でも短時間で完成度の高い動画を仕上げられる。
最近では、写真から動画を生成するサービスも登場している。館内写真をアップロードするだけで、まるでカメラが動いているかのような映像に変換してくれる。老舗旅館ならば、昔の写真を活用するのも一案だ。「Kling AI」などの写真から動画を生成するアプリを使えば、自動で古い写真の解像度を高め、色を補い、まるで当時の人が動いているかのような映像に再現してくれる。
動画が完成したら、国内のSNSだけでなく、海外ユーザーに人気のRedNote(小紅書)にも投稿したい。中国・台湾・東南アジアでは旅行情報の検索にこのアプリを使う人が多く、宿の動画を発信すれば現地の旅行者に直接届く。英語や中国語が得意でなくても、映像だけで魅力が伝わるのが強みだ。必要に応じて外国語音声を生成してくれるアプリを使ってナレーションをつけるのも良い。
完璧を目指すのではなく、まずは始めてみよう。動画制作は、いまや専門家やインフルエンサーだけのものではない。手軽に始められるのでぜひチャレンジしたい。
(アルファコンサルティング代表取締役)