ブッキング・ドットコム、LGBTQ+フレンドリーな宿泊施設が世界10万軒突破


 ブッキング・ドットコムは9月1日、大手町の3×3 Lab Futureにて「LGBTQ+と旅の未来を考える共創ワークショップ」を開催した。世界最大級のデジタルトラベルプラットフォームが推進する「Travel Proud」プログラムによるLGBTQ+フレンドリーな認証宿泊施設が世界で10万軒を突破、日本国内でも昨年の268軒から833軒へと大幅に増加している。

ブッキング・ドットコムの日本代表ルイス・ロドリゲス氏

多様性を受け入れる観光業へ

 「すべての人に、世界をより身近に体験できる自由を」という理念を掲げるブッキング・ドットコムの調査によると、日本のLGBTQ+旅行者の37%が旅行計画時に「LGBTQ+当事者であることが影響する」と回答。46%が「旅行中に本当の自分でいられるかどうか」を重要視していることが明らかになった。

 こうした背景を受け、同社は2021年に「Travel Proud」プログラムを開始。宿泊施設向けにLGBTQ+旅行者が直面する課題や、すべての宿泊客が歓迎されていると感じられる接遇方法を学ぶ無料のオンライントレーニングを提供している。

 プログラム開始から4年目を迎えた現在、「Proud Certified」の認証を獲得した施設は前年同期比49%増。日本語版の提供を開始した2024年時点で268軒だった国内のLGBTQ+フレンドリーな宿泊施設は、2025年8月時点で833軒にまで増加した。

「旅は自分を発見するプロセス」

 イベントでは、多様な背景を持つゲストが「印象に残っている旅」と「旅をしているときに、どのような自分でありたいと考えているか」というテーマについて語った。

 ブッキング・ドットコムの日本代表ルイス・ロドリゲス氏は、「私はブラジル出身で、日本に移住してから様々なことに気づきました。はじめは日本国内で旅行をする際、宿泊施設の対応に不安を感じることもありましたが、奄美大島への旅行では、外国人であることなどに関係なく、温かく迎えられたことが印象に残っています。私にとって、旅は自分自身を発見するプロセスだと感じています」と述べた。

 同社のアンバサダーであり、ハワイ・ホノルル在住のコンテンツクリエイターであるオウィン・ピアソン氏は箱根への旅で「中性的なデザインの浴衣や家族風呂など、誰もが安心して過ごせる空間があり、日本文化の”他者を尊重する姿勢”に深く感銘を受けました」と振り返った。また、「トランスジェンダーやノンバイナリーの方々、障害のある方や車いすユーザーも含め、どんな人でも”受け入れられている”と感じられるような社会づくりが求められています」と指摘した。

オウィン・ピアソン氏

 

 認定特定非営利活動法人 ReBit 理事の中島潤氏は、「旅は、予約の瞬間からすでに始まっていると感じており、その計画段階で”男性”か”女性”しか選べない場合、気持ちが冷めてしまうことがあるので、旅先で十分な選択肢があることは非常に重要です」と語った。

中島潤氏

 

 一般社団法人Famieeおよび株式会社wagamamaの共同代表である内山穂南氏は、「温泉に入ることが好きで、宿泊施設にはセパレートタイプの男女兼用浴衣や、個室の温泉施設があるなど、選択肢が豊富で快適でした。多様なスタイルを尊重する工夫がされていることに感動しました」と語り、選択肢の重要性を強調した。

内山穂南氏

 

 Smiles and Thanks株式会社の代表であるスティーブン・ヘインズ氏は、「アフリカ系アメリカ人として、チェックイン時に安全かどうかを見極められているような対応を受けることがありますが、旅は常に学びの機会だと考えています」と述べ、「大都市だけでなく、まだ発見されていない地域にも足を運び、多くのことを吸収してほしい。旅は、自分に誇りを持てる時間だと信じています」と語った。

スティーブン・ヘインズ氏

 

文化と多様性の両立に向けた課題

 イベントの最後には、「日本の規律・ルール」と「多様性への配慮」をいかに両立させていくかをテーマにしたグループディスカッションが行われた。

 その中で浮き彫りになった課題として、大浴場やトイレなど日本独自の文化や施設利用の場面で利用者が安心して選べる選択肢がまだ十分でない点や、チェックイン手続きの際に国籍や居住状況の確認が強調されることで心理的な負担につながる可能性がある点などが指摘された。

 日本の宿泊業界や旅行関連事業者も取り組みを進めているが、制度や意識の両面において改善の余地があることが共有された。今後は、国際的な視点と日本独自の文化的背景の双方を尊重しながら、誰もが安心して日本を訪れ、滞在を楽しめる環境づくりが求められている。

 
 
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