【体験型観光が日本を変える414】標津町で修旅高校生が体験学習 藤澤安良


 実りの秋になり、新米が採れてもコメ問題の名残が続く中、新潟の魚沼の知人からコシヒカリが届いた。おいしいのは今さら言うまでもない。実家も米農家なので米不足の心配はしていないが、揺れ動く米農業の行く末が気がかりである。

 彼岸というのに首都圏では気温が30度前後の日が続いている。東京は28度だから、当然半袖で航空機に乗り北海道の南知床標津町に向かった。

 現地中標津空港は小雨の中、気温は14度と東京都とは大きな差である。次の日からは快晴で20~25度と、とても過ごしやすい気候である。大雪山からはすでに紅葉の便りが届いているが、暑い夏が長かったせいか、知床地域はわずかに色づき始め出した程度である。

 秋アジの別名を持つサケは本来最盛期を迎えているが、温暖化のせいで海水温が高かったり、生態系の変化もあるのだろう、漁獲量は極めて少なく、地元漁業者には厳しい時代となっている。カツオの漁獲量が多いことで知られる気仙沼では昨年の2割程度と不漁である。

 一方、相模湾など関東近海でカツオがよく釣れている。サンマは豊漁という。いろいろな社会事情が変わりゆく時代に合わせて、変化し適合していかなければならない。観光も同様である。

 知床連山を50キロ先に臨み、北方領土の国後島を24キロ先に向かい合う根室海峡で修学旅行の高校生が海釣り体験をしていた。クロソイ、コマイ、カジカ、カレイ、マツカワ、サバ等、多様な魚種が釣れた。サケの産地に九州主産地だったサバがいるとは海洋環境の変化を感じずにはいられない。

 ほとんどの生徒が初めてとあって、何匹も何種類も釣れるので、飽きないと言いつつ、一向にやめようとしない。夢中である。

 また、乳牛110頭を飼育する酪農家に生徒が民泊しているところへ訪れた。搾乳や餌やり、ふんの処理、放牧などを体験していた。もちろん生徒にとっては全てが初体験である。しかし、熱心に仕事を覚えようとして頑張っていた。

 別の漁家に民泊した生徒は、大きなサケを三枚におろして、フライとアラ汁にしていた。自分たちがおろして揚げたものがおいしいのは当たり前である。

 別の学校の釣り体験プログラムでは餌を針につけられなかったり、釣った魚を針から外せなかったりしていたが、インストラクターのフォローのおかげで、全てを体験者ができるようになった生徒がどんどん出てくる。その進歩が教育である。

 民泊では時間やコミュニケーションが深まると同時に顔の表情、目の輝きが明らかに良く変わってきている。まさしく教育効果である。今さらであるが、体験と交流が人を感動させ、人の心を高めることになる。旅が向かう方向である。

 標津町は北方領土国後島を間近に望む所に北方領土館があり、北方領土の元島民からの体験講話が聞けるなど北方領土学習の平和学習が可能であり、体験プログラムも豊富で修学旅行適地として25周年を迎える。高齢化の進む田舎の地域活性化につながる取り組みである。

 
 
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