【口福のおすそわけ 560】行列のヒミツ? 竹内美樹


竹内美樹の口福のおすそわけ

 今年2月下旬、会社の近所に大行列が。ファミレス「ジョナサン」のあとに新店舗がオープンしたのだ。その正体は、北九州発祥のチェーン店「資さんうどん」東京1号店だとテレビの情報番組で知った。運営は「すかいらーくHD」だ。同社は昨年9月株式会社資さんを買収すると発表、その額何と240億円! 当時九州を中心に71店舗展開していたとはいえ、業界トップ「丸亀製麺」の840店には遠く及ばない。売上高も、2024年8月期で152億円と、買収金額には届かず。
 
 それでも買収した理由は、第一に「味」。同社が「資さん」のだしの味を理化学分析したところ、うま味成分のアミノ酸が非常に多く、行列のできる人気ラーメン店のつゆの成分に近かったそうだ。「クセになる味」で、全国展開も海外進出も可能と結論づけた。
 
 次に挙げられるのが、メニューの多さ。その数100以上という。人気のおでんや単品のとんかつ、唐揚げなど、ちょい飲みにピッタリな商品も。カツとじ丼や大えび天丼など、丼物も充実している。ミニサイズが選べるセットもあり、組み合わせは無限大。各店舗で手づくりしている名物「ぼた餅」も、年間540万個売れるほどの人気。24時間営業の店舗も多く、朝でも夜でも、毎日行っても飽きないよう工夫されている。お手頃価格も人気の理由だ。一番人気の「肉ごぼ天うどん」が税込み820円、ミニサイズ税込み550円。「資さんカレー」は税込み650円!
 
 だが、買収の最も大きな要因は、圧倒的な集客力だろう。北九州のソウルフードなのに、昨年12月に関東1号店として開店した千葉八千代台店の来店客数は、1日2千人以上という。会社近くの両国店も、105席の大箱なのに連日大行列だ。「あの資さんができたから行ってみよう」という人もいるだろう。
 
 話題作りのうまさには脱帽する。買収前に株式会社資さんがリリースしたキャッチコピーは「48歳、上京。」。2024年に関東初出店というのを、創業年数で表現したものだ。昨年7月には、東京神田で3日間限定の「資さんうどんPOP―UPレストラン」を開催、連日開店時刻を待たずして整理券配布が終了。3日目の先頭の客は、前日夜中から並んだというからすさまじい。
 
 そろそろオープン特需が落ち着く頃だろうと、先日朝10時半に行ってみると、すんなり入れた。「薬味コーナー」があり、つぼ漬け・天かす・とろろ昆布が好きなだけ小皿に取れる。人気の肉ごぼ天うどん、カツとじ丼と、季節限定の「冷やし胡麻(ごま)つけうどん」を3人でシェア。温かいうどんは、冷たいそば派の筆者にはチト軟らかかったが、讃岐うどんほどコシがあると食べづらい人もいる。コレなら子供から高齢者まで、幅広い層が楽しめるだろう。九州のしょうゆの甘味か、味付けが甘いのも、万人ウケする理由かもしれない。
 
 同社では、全国300店舗まで拡大する計画だという。外食産業で、コロナ禍以降久々に明るい話題だ。今後の動向に注目したい。
 
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。

 
 
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