【観国之光 513】相次ぐ熊の人身被害 観光地周辺にも出没 観光経済新聞 論説委員 内井高弘


熊の生息域が拡大、出会う機会が増えている

熊の生息域が拡大、出会う機会が増えている

 熊による人身被害が相次いでいる。テレビのニュース番組などでも頻繁に放送され、人との距離が近くなっていることを実感する。

 驚いたのは日本の世界遺産地区で熊に襲われたという事件だ。

 5日午前8時半ごろ、岐阜県白川村萩町の展望台行きシャトルバス乗り場付近で、スペイン人の男性観光客2人組のうちの1人が背後から熊に襲われ、右上腕を擦りむく軽傷を負った。

 熊は体長1メートルほど、子熊とみられる。幸い大きなけがはしなかったが、日本に来てまさか熊に襲われるとは思いもしなかっただろう。ましてや白川村は世界遺産・白川郷で知られる有名な場所で、観光客も多く訪れるところだ。被害に遭った外国人のショックはいかばかりか。

 村内で熊による人的被害は2014年以来という。村では警察や猟友会とともに付近をパトロールしている。

 同日夜には、長野・大町温泉郷の宿泊施設の庭に熊1頭が出没したというニュースもあった。また、9月30日には福島市内の観光施設で熊が目撃され、施設では営業を取りやめたという。

 こうした事件が続くとハイキングや登山などで山に入るのが怖くなる。熊よけの鈴や撃退スプレーなどを装備し、準備万端で臨むしかないが、何より、行くという行為にブレーキがかかるのが怖い。これは観光面でもいえそうだ。

 最近では市街地でも熊の出没が相次ぎ、東京都内では多摩地域を中心に200件ほどの目撃情報が寄せられている。札幌では子供たちが住む公園で熊の姿が確認され、近くの小学校が休校を余儀なくされるという事態も。

 富山県立山町は「今年は頻繁に熊が目撃されている。人が熊に対する準備をして、散策や登山をする必要がある」とし、熊に出会わないためには、(1)最新の熊の出没場所・状況を確認してから、散策や登山、テント場の利用をする(2)野外で行動する時は鈴などを携行し、音を出して人の存在を知らせる(3)複数人で行動する―ことが重要だとしている。

 宿泊や観光施設でもこうした注意を徹底すべきだ。それでも熊と出会うことがある。その場合、接近(50メートル以内)しての観察や写真撮影、大声で叫ぶ、追い払うことは絶対せず、走らず、背をむけず、ゆっくり後退すべきだという。

 熊の生息域が拡大し、遭遇する機会が増えている。実行はなかなか難しいが、心に留め置いてほしい。

熊の生息域が拡大、出会う機会が増えている
熊の生息域が拡大、出会う機会が増えている

 
 
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