
(左から)JTB 髙橋取締役会長、ハワイ州観光局 日本支局 エリック高畑会長
JTBとハワイ州観光局日本支局は2025年10月8日、ハワイ州と日本における医療・ウェルネス分野の相互交流に関する基本合意を締結した。両者は先進的医療の機会創出を目的とし、ハワイ州の医療関連機関とJTBが設立した「ジャパン・メディカル&ヘルスツーリズムセンター(JMHC)」が今後の計画策定を担う。新たな観光価値の創造へ向けた取り組み。
コロナ禍で深まった医療分野の協力関係
両者はこれまでもさまざまな交流を促進してきたが、特にコロナ禍においてその関係は深化した。この期間、JTBの関係団体がPCR検査の陰性証明書発行業務を担うなど、ハワイ州の方針に沿った往来再開の支援を実施。これを契機に、JMHCとの協力関係が強まった経緯がある。
基本合意の内容は多岐にわたる。ハワイ州では、日系人を含む多様な人種に対するがん予防や米国型の急性期医療、医療者教育などで日本との連携を強化している。また、オアフ島のみならずハワイ諸島全域で展開される「健康と平安を取り戻すウェルネスツーリズム」は世界中からの旅行者を魅了している現状がある。
一方、長寿国である日本では、国民皆保険制度の下で健診事業や質の高い医療を整備し、健康寿命の延伸を国の目標としている。iPS細胞による再生医療、アジアをリードするがん医療、低侵襲な心臓血管カテーテル検査など、国内では広く知られていながら、海外では十分に価値が認知されていない医療技術・医療機器・医薬品も少なくない状況だ。
これらの背景を踏まえ、JTBとハワイ州観光局日本支局は、ハワイ州と日本の双方において先進的な医療およびウェルネス体験の機会を創出するため、共に受入体制の構築を進めることになった。
今後の展望としては、ハワイでは最先端の医療・ウェルネス体験をサービスとして提供し、ハワイの観光における新しい価値を創出する計画だ。さらに、日本で治療を行った患者に対し、ハワイ側の医療関連機関で治療後ケアや相互交流に基づく医療体制を整備していく方針。JMHCは、日本の先進的な医療のPRを行うとともに、JIH(ジャパン インターナショナル ホスピタルズ)などの登録医療機関の協力により、日本側の受入体制を整えていく。
JTBは「交流創造事業」を事業ドメインとし、全国に広がるネットワークを活かして人流・物流・商流の創造による交流人口・関係人口の拡大を通じ、地域や観光事業者の課題解決を支援している。同社は「『人と人』、『人と場所』、『人とコト』をつなぎ、常に新たな価値を創出し地域に新たなイノベーションを起こす事を追求していきます」としている。
JMHCは2010年4月にJTBが設立した医療コーディネートを行う専門部署で、医療機関への受入調整手続きから受療までのサポートや、医療滞在ビザの引受業務など総合的にサポートサービスを提供している。2015年には医療インバウンドの推進団体である一般社団法人Medical Excellence JAPANより、医療渡航支援企業として第1号の認証を受けている。
一方、ハワイ州観光局日本支局は、日本市場におけるハワイへの観光誘致活動を行っており、旅行業界との協力関係構築、プロモーション、イベント、広告宣伝、広報などのマーケティング活動を実施。ハワイ州政府やハワイ関連企業と協力し、日本とハワイの交流を深める活動も行っている。
(左から)JTB 髙橋取締役会長、ハワイ州観光局 日本支局 エリック高畑会長