地域銀行は、豪華客船の紹介を通じて富裕層との取引を強化する。「富裕層のニーズに合致したサービスが限られている」(地方銀行関係者)なか、各行は豪華客船「飛鳥Ⅲ」などの運営元とビジネスマッチング契約を結び、一定の紹介手数料を受け取る体制を構築。高額資産を持つ個人や企業経営者などに豪華客船を紹介し、顧客の満足度向上や囲い込みなどを狙う。【記事提供:ニッキン】
7月に就航した飛鳥Ⅲは、船内スイートルームの一部を使い、47都道府県の特色を反映した47客室を設けることが特長の一つで、地域銀各行が協力している。飛鳥Ⅲを運行する郵船クルーズ(横浜市)と出資関係にあるアンカー・シップ・パートナーズ(東京都)は、地域銀との連携が拡大している。
同社は2019年からビジネスマッチング契約の取り組みを始め、足元の締結先は約30行。成約となった場合は銀行に紹介手数料が支払われるのに加え、契約した顧客も特典を受け取れる。各行は旅行業法に抵触しない範囲内で、同社のクルーズ船を案内。これまでに約600人を同社へ紹介した。
中国銀行では、個人営業担当者の「ウェルスコンシェルジュ」が中心となって提案。同行では、富裕層に対してウェルスコンシェルジュが資産の、(1)運用(2)承継(3)管理(4)活用――の四つの視点で提案活動を行っており、活用の一環として飛鳥Ⅲなどを紹介する。コンサルティング営業部の古市健太調査役は、「相場に左右されない商品のため、ドアノックツールとしても活用できる」と話す。
地域の人口減少や金利復活を機に、金融機関による個人顧客の獲得競争は激しさを増す。そうしたなか、一定の預金残高や投資信託口座を持つ富裕層との接点強化の重要性は高まっている。
アンカー・シップ・パートナーズは今後、「地域銀とのビジネスマッチング契約による取り組みを加速させる」(担当者)として、契約の締結先を拡大するほか、キャンペーンなども展開する方針だ。


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