東京工科大学デザイン学部は9月19日、株式会社羽田麦酒と連携した実践的教育プログラムの一環として、学生発案による蒲田発のオリジナルクラフトビール「包」(ほう)を共同開発したと発表した。9月24日より同社運営のオンラインショップおよび都内レストランにて数量限定で販売される。
地元ブルワリーと連携、学生45名が参画

この取り組みは、地域の魅力抽出からコンセプト立案、製造、商品化、宣伝、販売までのプロセスを実践的に学ぶデザイン教育プログラム。4月から6月にかけて同学部3年生の有志45名が参加した。大田区内のクラフトブルワリー3社との連携のもと、12チームによる「新商品開発コンペ」を開催。各社へのプレゼンテーションを経て、第1弾として株式会社羽田麦酒と3名の学生チームによる商品化が実現した。
出汁の効いたまろやかな味わい
「包」は上面発酵製法を用いた琥珀色のアンバーエール。麦芽の甘みと鰹節・昆布・椎茸で取った出汁の風味がじんわりと広がる、苦みを包み込むようなまろやかな仕上がりとなっている。
アルコール度数は5%。炭酸は中程度の細かな泡に調整することで優しい飲み心地も追求した。飲む温度によって香りの変化も楽しめるという。
パッケージデザインは、丸みを帯びた「包」のロゴと、出汁の効いた豊かな味と多様な個性が混じる街のイメージをグラデーションで表現。オンライン販売限定のオリジナル風呂敷も用意された。価格は770円(税込・ビール単品)。
学生たちの発想から生まれた「包容力」
開発に参加した学生チーム(デザイン学部3年 木原あかり、大竹紀愛、狩野遥)は、蒲田の街中をリサーチする中で、多国籍料理店が並ぶ繁華街から昔ながらの銭湯まで一見混沌としたイメージの中にも、国籍や世代、暮らしを問わず多様な人々や文化を温かく受け入れる土地柄の「包容力」というテーマに着目した。
学生チームは「約3ヶ月の制作期間を経て、企画・デザイン・味作りまでを行い、クラフトビール『包』が誕生しました。蒲田の街に息づく”包容力”をテーマに、何度も議論や試作を重ね、想いをデザインや味わいに込めました」とコメント。
さらに「この取り組みを通して、商品作りの楽しさや難しさを学ぶと同時に、蒲田という街への愛着も深まりました。また、羽田麦酒さんのサポートで、自分たちのデザインが初めて商品として世に出るという、かけがえのない経験となりました。この街の包容力が、クラフトビールを通じて広がっていくことを願っています」と述べている。
味の開発も学生が主導

学生たちは商品コンセプト、副原料案、味覚構成、ネーミング、ラベル、販促品などを提案。メーカーと製品化に向けた協議や試作を重ねてきた。
味の開発過程では「家にある調味料を持ち寄り、3人で試飲会をしてみることに。そこで、出汁醤油を加えてみるとそのまろやかさが包容力にぴったりでした」と、試行錯誤の末に出汁を使用する着想に至ったという。
「お出汁の異なる素材の味を調和させる様が、様々な人や文化を包容する蒲田の街を映すものだと思わされました」と、味とコンセプトを結びつける発想も学生ならではの視点だ。
この取り組みは、2024年に同学部の教員が教育プログラム導入に先駆けて試験的に実施した流れを汲むもの。今後は他の2社(2チーム)によるクラフトビールも順次商品化される予定だという。
株式会社羽田麦酒は2014年12月に開業し、飲食店向けOEM供給を専門とする受託生産専業型のブルワリーとして事業を展開。現在はOEM製造のほかに、羽田ブルワリーオリジナルブランドビールも多数開発・販売している。





