【専門紙誌5社共同企画】各紙誌の視点で見る「若者による地方創生」 ハウジング・トリビューン 「知る」から「来る」「住む」へ 移住・定住で実績積む佐久市


利便性と豊かな自然環境を持つ佐久市

 長野県の東部に位置し、首都圏から向かえば軽井沢町と小諸市に挟まれる佐久市。有名な観光名所があるわけでもないが、移住希望者のあいだでその知名度は高い。まちと里山が比較的近く、利便性と豊かな自然をともに享受できる環境、さらに新幹線で東京駅まで約70分という首都圏からの良好なアクセスが移住者にとっての大きな魅力だ。加えて、佐久市が明確なコンセプトで長く取り組んできた移住・定住の施策が結果につながっている。

 佐久市は、「佐久市まち・ひと・しごと総合戦略」から現在の「佐久市デジタル田園都市国家総合戦略」(24~26年度)まで、「知る」ことから「来る」ことへ、「来る」ことから「住む」ことへとつなげるアプローチを一貫して続け、移住・定住に取り組んできた。

 現在の総合戦略で掲げる目標の一つが「変革に即した大胆な移住(ヒト)の流れを加速する」で、具体的な指標として人口の社会動態増加数24~26年累計で1350人(20~22年累計1008人)、県外からの市内観光地利用者数26年125万人(22年102万9200人)、行政サポートによる移住者24~26年累計で1200人(22年364人)だ。シティプロモーションにより市の魅力を発信、交流人口・関係人口を創出・拡大し、若者や女性をはじめとする市民が住み続けたい・戻りたいと感じられるようなシビックプライドを醸成する。また、来訪者を増加させる施策はもとより、できるだけ長い期間滞在することを促す。

 こうした施策の最終ゴールは移住・定住だ。「交流人口は経済的効果が期待でき、それが関係人口へ、そして2拠点居住へと進む可能性があるが、それを最終的に移住、そして定住に結び付ける」(企画部 移住交流推進課 渡邉正人課長補佐)と、「知る」「来る」「住む」のサイクルを回すことで移住・定住につなげてきたのである。
      ◇

 佐久市らしい取り組みの一つが、21年からスタートした「佐久市移住検討者滞在費補助金」だ。同市への移住や2地域居住を検討している人が対象で、仕事探しや住居探しで佐久市に滞在する際にかかる経費の一部を補助するもので、利用限度は通算6日分。レンタカー、新幹線、高速バス、高速道路利用、タクシーなどの交通費、宿泊費、一時保育サービス利用費を対象に、実費の2分の1以内で、それぞれ上限が定められている。宿泊費については市内であればどの施設でも対象となる。試住を推進し、2地域居住・移住につなげる施策だ。

 利用者は、21年度66世帯、22年度106世帯、23年度が112世帯、24年度が5月までで155世帯と右肩上がりに増えている。注目されるのは、この補助金活用者の4割前後が実際の移住に結び付いていることである。「佐久市の移住をある程度決めている人が、最後の確認に試住している」(渡邉課長補佐)とみられる。佐久市では試住支援サービスとして特設サイト「Shijuly(シジュリー)」も開設し、先の補助金のほか、試住できる住宅や宿泊施設、コワーキングスペースなどの情報を提供している。

 また、宿泊施設と体験農園を整備した「佐久クラインガルデン」も人気で、キャンセル待ち55組となるほど。この地域住民と交流できる試住を通して、09年のスタートからこれまでに10組の移住につながっている。
 
 (ハウジング・トリビューン)


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