
山崎氏
9月20日に大阪・関西万博会場で全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)青年部が主催した「宿観光旅博覧会 宿フェス in Osaka EXPO 2025 “ONSEN” Summit」のオープニングセレモニー「温泉文化サミット」に来賓としてお招きいただきました。
万博の西ゲート近くのEXPOアリーナ Matsuriで、午前10時から午後6時まで開催し、全国47都道府県のブースのほか、温泉文化をテーマに都道府県別に温泉湧出地のマップも展示。ステージでは温泉むすめのトークショーをはじめとする魅力的な催しも多数実施され、大勢の楽しむ人の姿が見られました。
大盛況ぶりが日々、報道されるほど話題の万博ですが、私は初訪問でしたので、まずは万博の所感から記します。
幸い関係者パスで入場できたため、一般に開場される前に入ることができました。開場されると同時に、ゲートからあふれ出した人々が大屋根リング内のパビリオンへ一気に走って向かう姿に、万博に対する熱狂ぶりを感じました。
開場直後はさほど混み合っておらず、2キロにわたる世界最大の木造建築の大屋根リングを悠々と歩くことができました。リング内に集めた世界各国のパビリオンは、国を象徴する建物であり、世界をぎゅっと集めた様は実に壮観。リングの外は海が広がり、潮風が吹いてきました。なんだか、地球儀の上を歩いているような感覚に陥りました。
その後、ぶらぶらとパビリオン前を歩いていると、まだ日本人より各国のスタッフの比率が高かったせいでしょうが、まるで海外の拠点となる空港に降り立った時のような匂いがしてきました。
ヒマラヤ山脈をモチーフにした荘厳な外観のインド館では、スパイス各種とアーユルヴェーダの施術を受ける時に嗅ぐ匂い。現地から運んできた石を積み重ねて作ったサウジアラビア館では、伝統衣装である「トーブ」を着た男性が打ち合わせをしており、木の香りに似たアラブ特有のウードの匂いが漂ってきました。
パビリオンを巡り、こうしたエキゾチックな2時間を過ごした後、再び「宿フェス」に戻ると、温泉地や温泉、旅館の風景写真の展示、日本的な設えにほっとし、わが国固有の文化を生みだしてきたことを改めて感じるのです。
午後0時15分から始まった「温泉文化サミット」では、温泉文化をユネスコ無形文化遺産へ登録するために尽力されている皆さんの力強いスピーチを拝聴し、登録後の大きな経済効果が期待できることに強く賛同しました。
私も日本の温泉文化を伝える著作を海外でも数冊出版し、出演している日本の温泉番組をアジア各国で放送してもらい、その成果として2008年にVISIT JAPAN大使(当時はYOKOSO! JAPAN大使)に任命されて以来、温泉文化を世界に伝える活動は継続中です。つまり私としても切なる願いなのです。
当初、全旅連青年部の方から「万博で『宿フェス』をやるんです」と聞いた時、パビリオン建設の遅延などのトラブルが起きていた頃でしたので、何を考えているのだろうと感じました。しかし、その後「国策である万博で、国内外から注目されている観光業界の代表として、宿泊業の心意気を伝えたい」と聞き、その高い志に心打たれたのです。
ユネスコ無形文化遺産登録を目指しているからこそ、世界を凝縮した万博でやる必要があったのです。万博で「宿フェス」を実施するそのパワーは、ユネスコ登録に向けた第1の関門である国内の推薦を勝ち取る一助となるでしょう。
日本独自の文化、世界に誇る温泉文化、1300年も前から史実として残っている日本人と温泉の関係性をもってすれば、次回、他国で開催される万博には「温泉文化」を押し出すべきでしょう。
各国のパビリオンのスタッフにも温泉文化を伝えたい。そんな気持ちが高まりました。
(温泉エッセイスト)