【口福のおすそわけ 554】姫路名物「えきそば」竹内美樹


竹内美樹の口福のおすそわけ

 創業明治21(1888)年、兵庫県姫路市の食品会社「まねき食品」6代目、代表取締役社長竹田典高氏にお目にかかる機会を得た。山陽鉄道開通に伴い、創業翌年姫路駅で日本初の経木の折箱入り「幕の内駅弁」を発売した、駅弁の老舗だ。
 
 同社が昭和24(1949)年から姫路駅で提供を始めたのが、姫路名物「えきそば」。現在開催中の大阪・関西万博にも出店しているが、看板商品として開催前に発表された、1杯税込み3850円の「究極のえきそば」が話題を呼んだ。それもそのハズ、駅のホームや駅近くの店舗で販売されている一番人気の「天ぷらえきそば」は、1杯税込み480円とワンコインだ。
 
 そもそも「えきそば」って? つゆは和風だしなのに、麺はかん水入り中華麺という、姫路のソウルフードだ。終戦後、大きな機械設備が要らない麺類を駅で販売しようとしたが、当時統制品だった小麦粉が入手困難だったため、こんにゃく粉とそば粉を混ぜた麺に和風つゆで販売。だが、伸びやすく傷みやすかった。そこで試作を重ね、保存性を高めるため、かん水を入れた特製中華麺が完成したと竹田社長から伺った。
 
 せっかく姫路に来たからには食べなきゃと、駅直結ピオレおみやげ館の「播州うまいもん処」へ。えきそばの他、姫路おでんや姫路玉子焼きなど名物が食べられるフードコートだ。出来上がると呼び出しベルが鳴るのを想像していたら、驚異のスピードで提供された。その速さは有名なようで、公式インスタグラムでも「30秒で提供されるって本当?」という検証企画が。麺を湯がいて丼に入れ、天ぷらと青ネギをのせ、つゆをかければ出来上がり♪で、見事30秒!
 
 さて、そのお味は…? しみじみ優しい味わいの和風だしを吸ったかき揚げと、やわらかめの麺が絡み合い、ハマる人続出というのも納得。次回は甘辛く炊いたおあげがのった「きつねえきそば」も食べてみたい。
 
 万博で提供されている「究極のえきそば」は、すき焼き風に煮込んだ神戸牛の肩ロース肉を100グラムもぜいたくにのせ、半熟の温泉卵や三つ葉をトッピングした豪華版。つゆは通常の和風だしにホタテやハマグリのエキスを加えた万博仕様。麺も生麺をその場でゆで上げるこだわりようだ。
 
 そして何といっても、能登半島の震災復興を支援したいと、輪島塗の器を採用したことに、万博出店を意義のあるものにしようという竹田社長の気概を感じる。
 
 ちなみに、ネット通販で神戸牛すき焼き用肩ロースは100グラム税込み3240円だった。「究極のえきそば」は妥当な価格。設備投資を考えれば赤字だろう。千円を切る弁当なども提供されているのに、価格だけが一人歩きしてしまったのは残念。
 食を通じて世の中を元気にするとともに、日本が誇る文化を伝え未来へつなぎたいという同氏の思いがかなうことを願ってやまない。
 
 「MANEKI FUTURE STUDIO JAPAN」は大屋根リング中央「静けさの森」の真横。行かなくちゃ!
 
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。

 
 
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