
観光・宿泊業界における人材不足は、いまや経営上の最大課題のひとつである。厚労省の統計によれば、全業種平均の有効求人倍率が1.19倍であるのに対し、宿泊・ホテル・旅館業界は3.27倍と突出して高く、求職者1人に対して3件以上の求人がある状況だ。帝国データバンクの調査でも、観光地域の宿泊・飲食業の約8割が人材確保に課題を抱えている。つまり「観光人材」をいかに確保するかは、集客と同じくらい経営の根幹に関わるテーマである。
ここで改めて考えたいのは、「集客」とは単に顧客を呼び込むことではないという点だ。人材を採用し、働き手を確保することもまた「集客」の一部である。顧客がどれだけ集まっても現場を支える人材がいなければサービスは成り立たない。観光産業の成長には、顧客と人材の双方に選ばれる仕組みが必要になる。
WEB集客においては、料金表示だけでなく「価格以上の体験価値」を訴求することが重要だ。例えば「旬の地元食材を使った夕食付き」「滞在中は温泉利用無料」といった具体的な特典を明示し、顧客に納得感を与える。さらにSNSやUGCの活用により「利用者の声」を可視化することで、信頼感を醸成し、選ばれる力を高められる。
これは人材採用にも同じ構造がある。給与や条件だけではなく、「ここで働くことで得られる経験価値」を提示し、SNSや動画で現場の声を発信することで、応募者は「自分が働く姿」をリアルに想像できる。採用においても、顧客集客と同様に「情報発信の質」が選ばれるかどうかを左右している。
実務的な対策としては、業界特化型の求人サイトの活用が有効である。観光業界を志望する層に的確にリーチできるため、ミスマッチを防ぎ効率的な採用につながる。弊社が運営する「観光求人コム」もその一つであり、観光業に特化した採用チャネルとして施設と人材をつなぐ役割を担っている。顧客集客にOTAやSNSを使うのと同じように、人材集客にも特化型チャネルの活用が成果を左右する。
観光産業の未来を支えるのは、顧客と人材の両方に選ばれる戦略である。集客とはその双方を対象とする概念であり、どちらか一方が欠けても持続的成長は望めない。その突破口はWEBマーケティングにある。
(株式会社プライムコンセプト 小林義道)