【専門紙誌5社共同企画】各紙誌の視点で見る「若者による地方創生」 農村ニュース 非農家出身者が就農 課題は農地、資金、技術


齊賀課長

 地域の基幹産業である農業。その担い手を確保することは地域活性化の第一歩だ。一方、新規就農者は全体的には減少傾向にある。平成27年6万5千人いた新規就農者は令和5年には4万3500人となっている。

 農林水産省経営局就農・女性課の齊賀大昌課長は、新規就農者の減少に対する懸念について同意しつつもポジティブな面もある、と語る。「確かに新規就農者は減少傾向にあるが特に減少しているのは親元就農。一方で農業法人等に雇われる形の『新規雇用就農者』はおおむね横ばいで推移。特に40代以下の若い層で、かつ非農家出身者が多い。これは新たに経営を立ち上げるリスクより、雇用という形でも就農して、基盤を整えて、ステップアップしていくというようなマインドの人たちが増えてきているのではないか」とみている。

 こうした非農家出身者がなぜ職業として農業を選択したのか。全国新規就農相談センターが行った調査(複数回答可)によると、約半数が「自ら采配を振れる」と回答。また「農業はやり方次第でもうかる」も35%など、ビジネス面での魅力を感じている様子が伺える。

 これに加え齊賀課長は「今年8月からスタートした『農業界とスポーツ界の連携に関する勉強会』では、スポーツ界側からみた農業の魅力について、『努力した成果が目に見えてわかる』ことを挙げる声が多かった。そうした点も若者のマインドにあっているのではないかと思っている」ともしており、さまざまな要因が絡み合い新規就農につながっている様子が伺える。

 就農時の中心作目については、50%が野菜を中心に据えているほか、21%が果樹で、わが国農業の基幹作物であり多数を占める稲作は12%と低い。一方、稲作は親元就農で多い傾向にあると齊賀課長。「稲作に代表される土地利用型作物はどうしても初期投資がかさみがちだ。加えて、収益性を考えたとき、稲作の場合、農業所得で500万円を得るためには少なくとも15ヘクタールが必要となる。そうした規模を確保するという点でも難しい側面がある。そうした点から土地利用型作物については、すでに一定の経営資源を有している親元就農は向いているといえる。すなわち、作物によって新規就農の姿は異なって良いのではないか。いずれにせよ『もうかる農業』につなげることが大切だ」とも。

 今後新規就農を増やしていくうえでの課題について齊賀課長は農地、資金、技術の3点を挙げる。このうち農地については農地中間管理機構(農地バンク)を中心に土地の集積・集約や基盤整備が進んでおり、資金については、日本政策金融公庫の青年等就農資金などさまざまな制度がラインアップされている。技術については、データを活用したスマート農業が重要だと指摘。「気候変動でベテランでも先が読めない状況となっている。新規就農者においては言わずもがな。だからこそさまざまな知見、データを集め、使って次の打ち手を考えることが、新規就農者が農業を続けるうえで大切。そうしたスマート農業技術については、農林水産省も導入や開発を積極的に支援している」とした。


スマート農業技術は若者にとっても重要なツール(写真は北海道音更町で開催されたスマート農業研修の様子)

(農村ニュース)


齊賀課長

 
 
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