
観光経済新聞社は、第39回「にっぽんの温泉100選」の投票を受け付けている。旅行会社やOTAなどの投票によってランキングを決定する。配布する投票はがきやオンラインを通じて投票を呼び掛け、票数を集計する。投票の締め切りは10月末。温泉地が取り組む環境整備やプロモーション、旅行者の満足度などに応じて毎年度、順位が変動する。投票スタートに合わせ、参考までに2024年度に実施された第38回「にっぽんの温泉100選」の投票結果であるランキングを振り返ってみよう。
前回は1位草津、2位道後、3位下呂
「にっぽんの温泉100選」は、温泉地に対する旅行者の支持、旅行会社の評価を把握するために1987年にスタートした。ランキングを通じて地元関係者の地域づくりへの意識を高揚し、全国の温泉地の活性化を促すことを目的とする。
投票は、JTBやKNT―CTホールディングス、日本旅行、東武トップツアーズなどの旅行会社、じゃらんnetや楽天トラベルといったOTAなどに協力を求めている。24年度の第38回の有効投票数は2292件。内訳ははがき投票が1178件、オンライン投票が1114件。投票1件で最大5カ所の温泉地を記入できることから総投票数は9203票となった。
24年度の第38回では、1位が草津温泉(群馬県)だった。首都圏を中心に票を集めたとみられ、22年連続トップの位置を維持した。地域を挙げた中長期的な視点に基づくまちづくりが進められ、湯畑を中心とする景観や施設の整備が評価されたとみられる。24年度にはクラシックエリアの整備、もみじ公園の新設、バスターミナルの改修にも取り組んでいる。
2位は道後温泉(愛媛県)。前年度の3位から2位に順位を上げた。24年7月に道後温泉本館が約5年半ぶりに全館営業を再開した話題性も投票を後押ししたとみられる。道後温泉本館は19年1月の工事着手以降、保存修理を進めながら営業、集客するという取り組みを成功させた。
3位は下呂温泉(岐阜県)となった。温泉の魅力に加え、充実した宿泊施設、グルメ、イベントなどへの評価が高いとみられ、トップ3圏内は5年連続となった。観光庁の「先駆的DMO」にも選定されている下呂温泉観光協会を中心とした地域づくりも全国から注目されている。
4~7位は前年度と変わらず、投票次第で順位に波乱も
4~7位の顔ぶれ、順位は前年度と同様だった。4位が別府八湯(大分県)、5位が有馬温泉(兵庫県)、6位が登別温泉(北海道)、7位が指宿温泉(鹿児島県)。8位には、前年度の11位から順位を上げた黒川温泉(熊本県)が入った。9位は城崎温泉(兵庫県)、10位は箱根温泉(神奈川県)となった。
トップ10をうかがう位置にも有力温泉地が入っている。11位に由布院温泉(大分県)、14位に熱海温泉(静岡県)がランクした。
13位には、能登半島地震で大きな被害を受けた和倉温泉(石川県)が入った。前年度の12位とほぼ同位置をキープした。一部を除いて多くの宿泊施設が休業する中での上位入りは異例だが、にっぽんの温泉100選実行委員会では、復旧・復興への応援票、災害当時の避難対応を評価する票が集まったとみて、投票結果のままランキングすることにした。
注目温泉地では、乳頭温泉郷(秋田県)は20位から19位に、霧島温泉(鹿児島県)は35位から28位に、上諏訪温泉(長野県)は47位から43位に、稲取温泉(静岡県)は64位から54位に、それぞれ前年度から順位を上げた。
他の順位の動向では、能登半島地震の影響を受けたが、24年に開業した北陸新幹線金沢―敦賀の沿線の温泉地が順位を上げた。あわら温泉(福井県)が前年度の31位から23位に順位を上げた。山代温泉(石川県)は36位から25位に、山中温泉(石川県)は41位から39位にそれぞれ順位を上げた。
伸びが目立つ主な温泉地では、三朝温泉(鳥取県)が46位から30位に、石和温泉(山梨県)が66位から49位に、川湯温泉(北海道)が70位から55位に、かみのやま温泉(山形県)が77位から59位に、越後湯沢温泉(新潟県)が82位から59位に、松之山温泉(新潟県)が87位から62位になった。
前年度は圏外ながら、24年度に100選に入った温泉地は、76位の黄金崎不老ふ死温泉(青森県)、83位のニセコ温泉郷(北海道)、89位の長島温泉(三重県)、97位の天童温泉(山形県)、鴨川温泉(千葉県)、西山温泉(山梨県)、100位の作並温泉(宮城県)だった。