
2025年6月 議員連盟、知事の会、全国推進協議会が官邸を訪問し、石破茂首相に2028年最短でのユネスコ登録を要望した
「温泉文化」をユネスコ無形文化遺産に―。観光業界、都道府県、国会議員を中心に進めてきた登録への推進活動がヤマ場を迎えている。最短の2028年に登録を実現するには、まずは日本政府から「提案候補」に選出される必要があるが、例年の動きを参考にすると、そのタイミングは今年12月ごろとみられる。日本人は当たり前のように温泉に親しんできたが、人口減少や少子高齢化、後継者不足、あるいは自然災害の発生など、とりまく環境は厳しい。早期の登録を弾みに温泉文化を守り、次世代へと受け継いでいきたい。
主に次の3団体が連携しながら登録の実現に向けた活動を推進してきた。
「温泉文化」ユネスコ無形文化遺産全国推進協議会=全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会に事務局を置き、日本温泉協会、日本旅館協会などの観光団体、関連企業が参加している。会長は元文化庁長官、多摩美術大学理事長の青柳正規氏。
「温泉文化」ユネスコ無形文化遺産登録を応援する知事の会=全国47都道府県が参加。会長は平井伸治鳥取県知事、事務局長は山本一太群馬県知事が務める。
「温泉文化」ユネスコ無形文化遺産登録推進議員連盟=自民党、公明党の国会議員100人以上で構成。会長は菅義偉元首相。
今年6月には、3団体の代表者らが首相官邸を訪問し、石破茂首相に対し、2028年の登録実現に向けてユネスコに提案するよう要望した。
7月には、温泉文化の保存、継承を担う組織体として「『温泉文化』国民会議」を発足させた。企業や団体、自治体などを対象に会員を募り、体制、活動を強化する。また、日本温泉協会が設置している有識者検討会では、温泉文化の定義、担い手、保護措置などを提言として整理した。
知事の会会長の平井鳥取県知事は、9月8日に開かれた会合で、温泉文化の定義付けや保護措置の整理、国民会議の設立、関係機関への要望など、これまでの活動で「一定の成果を固めることができた」とした上で、登録実現に向けて、関係機関や国民へのアピール活動などの「ラストスパート」を呼び掛けた。
登録への今後のスケジュールは、過去の動きを参考にすると、文化庁、文化審議会の検討を経て、12月ごろに提案候補が決定する見通し。来年3月ごろ、政府がユネスコに提案書を提出。ユネスコの評価、勧告を得られれば、2028年の登録が実現する。
■「温泉文化」ユネスコ無形文化遺産登録に向けた動き
2019年6月25日
日本温泉協会の会員総会で、会員提出議題として温泉文化のユネスコ無形文化遺産への登録を目指す議案が全会一致で承認
2022年11月11日
自民党、公明党の国会議員が「『温泉文化』ユネスコ無形文化遺産登録推進議員連盟」を設立
2022年11月21日
17道県が「『温泉文化』ユネスコ無形文化遺産登録を応援する知事の会」を設立。後に全国47都道府県が参加
2023年4月24日
全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会、日本温泉協会、日本旅館協会が民間の推進組織として「『温泉文化』ユネスコ無形文化遺産全国推進協議会」を設立
2023年4月28日
日本温泉協会が設置した有識者検討会「温泉文化のユネスコ無形文化遺産登録に向けた検討会」が初会合
2023年6月16日
「経済財政運営と改革の基本方針2023」(骨太の方針)が閣議決定され、温泉、旅館について「観光資源・文化資源」と記載
2023年7月11日
「温泉文化のユネスコ無形文化遺産登録に向けた検討会」が早期登録に向けた提言(中間取りまとめ)を公表
2023年11月17日
知事の会が温泉関連団体、宿泊施設への実態調査を実施(1次調査)
2024年8月30日
知事の会が温泉文化調査研究を実施(2次調査)
2025年6月30日
議員連盟・知事の会・全国推進協議会が石破茂首相を訪問し、2028年最短のユネスコ登録を要望
2025年7月29日
温泉文化の保護、継承を担う「『温泉文化』国民会議」が発足
2025年7月29日
「温泉文化のユネスコ無形文化遺産登録に向けた検討会」が2028年登録に向けた提言を公表
2025年6月 議員連盟、知事の会、全国推進協議会が官邸を訪問し、石破茂首相に2028年最短でのユネスコ登録を要望した