日本能率協会、福岡でホスピタリティイベント 旅館とホテルのトップが語る九州の未来


トークセッションでの桑野氏(左)と浜田氏

地域愛で紡ぐ持続可能な幸福

 日本能率協会は17日、「Hospitality & Food Week in九州・沖縄」の会場(マリンメッセ福岡)で、特別講演「温泉宿とホテルが描く未来~人と地域の魅力で紡ぐ持続可能な幸福~」を行った。九州を代表する旅館とホテルの女性経営者が、それぞれの視点から事業戦略と地域への思いを語り、満員の会場は熱心に聞き入った。

 登壇したのは、由布院玉の湯(大分県由布市)の桑野和泉社長(日本旅館協会会長)と、JR九州でホテル事業部長を務める執行役員の浜田真知子氏。

 JR九州は、九州・沖縄を中心に17の旅館・ホテルを運営。浜田氏は昨年1月に開業した「長崎マリオットホテル」を例に、ホテル事業の戦略について語った。

 浜田氏は「開発段階から長崎にしかない、ならではのホテルを追求した」と強調。外観は港町・長崎にちなんで船をイメージ。内定式をマリオットのラッピングを施した路面電車内で行うなど、ユニークな取り組みで開業前から話題を創出した。

 地域との連携も積極的に進め、地元を代表する企業とコラボしたオリジナルパッケージの土産や、佐世保のロングセラー菓子「味カレー」を鉄板焼きのメニューに取り入れた斬新な一品を開発。

 さらに、長崎県美術館と連携し、所蔵する美術品をモチーフにした「九州一美しいアフタヌーンティー」を提供するなど、地域の魅力を最大限に引き出す戦略で、新たな顧客層の獲得に成功している。

 桑野氏は由布院温泉の歴史をひも解きながら、これからの温泉地が目指すべき姿を説いた。

 約100年前に林学博士・本多静六がドイツの保養地をモデルとしたまちづくりを提言したことが由布院の原点だと紹介。50年以上続く映画祭や音楽祭も「楽しいことをしたいという純粋な気持ち」が原動力だと語った。

 近年、オーバーツーリズムが課題となる中、コロナ禍を経て「ゆったりと歩ける保養のまちという原点に今一度戻るべき」と強調。その思想を具現化したのが、長期滞在で地域との深まりを生み出すことを目指す姉妹店「STAY玉の湯」の開業だ。「保養」という本来の価値を見つめ直し、新たな需要を掘り起こす挑戦に注目が集まる。

 後半のセッションで両氏は未来に向けたキーワードとして「人材」の重要性を挙げた。

 桑野氏は「宿が生き残るには、旅館でもホテルでも『人』が最も大事。リピーターを育てるためにも、子供たちが喜んで来てくれる宿、高齢者が安心して旅行できる優しいまちづくりが不可欠」と力説。浜田氏も「マリオットでは宿泊業とは異なる業種からの人材も多く、それがホテルの個性につながっている」と応じ、多様な人材が組織を強くするとの考えを示した。

 「わたしたちの共通点は、地域を誰よりも愛し、育てていきたいと思っていること」。セッションの冒頭で桑野氏が語ったこの言葉に、両氏の思いが集約されている。

 旅館とホテル、業態は異なるが、地域に深く根差し、人と共に魅力を紡いでいく先にこそ、両氏が示した持続可能な幸福があることをうかがわせる講演だった。


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