
トークイベントの様子。鳥海氏(左)と高田社長が、最新トレンドやオーバーツーリズムの解決策について議論した
オーバーツーリズム解消のヒントも
Trip.comは、9月下旬に開催されたツーリズムEXPOジャパン2025愛知・中部北陸に出展した。26日には航空・旅行アナリストの鳥海高太朗氏をゲストに迎え、同社日本法人の代表取締役社長・高田智之氏とのトークセッションをブース内で開催。昨今の旅行動向やオーバーツーリズムの現状、テクノロジーの進化について、意見交換を行った。
冒頭、近年の旅行者の動向について高田氏は「安いから旅行に行くというより、明確な目的をもって旅行をする人が増えた」と総括。同社ユーザーの間では、地方部で楽しめるアウトドアなどの自然体験などが人気で、エリア別で見ると、九州や北海道が人気だったと報告した。
インバウンドの傾向については、鳥海氏が「日本の伝統的風景が楽しめる地域に人気が集まっている一方、神戸や横浜などは入込客数が少ない」と解説した。高田氏は自社ユーザーについて、地域別で見ると今夏は福岡、沖縄が韓国の旅行者の間で人気だったと報告。一方、コロナ禍以降はソウル―上海便の利用が東京行きの便を抜き、国や地域によってはアウトバウンドトレンドが急変することもあるとした。
一部の地域で問題になっているオーバーツーリズムについて鳥海氏は、地元住民、日本人観光客、外国人観光客の三つのカテゴリーを相手に考える必要があると主張。「外国人観光客が多すぎると、日本人観光客を失ってしまう。自国民の観光客を失わない戦略をとる必要がある」とし、その改善策として観光施設などでの「予約制」を提案。JR東海が京都の東福寺などで展開する「早朝貸切拝観」などを紹介した。
高田氏と鳥海氏は、地方観光の課題についても議論。2次交通で配車アプリや電子決済が利用できない問題を挙げた。高田氏は、「オーバーツーリズムは、2次交通問題が解決できれば自動的に分散していく。逆に(訪日客は)車が運転できないから、東京や大阪に集中しているのではないか」と持論を展開した。
また日本人のアウトバウンドについて高田氏は、回復の解決策として、パスポートを所持していない潜在層に訴求できていないと指摘。同社が提供しているアプリでは、翻訳機能に加え、空港送迎やeSIM、各種アトラクションの予約手配がすべてアプリ内で完結すると紹介した。
トークセッションでは、旅行業界におけるAI技術の浸透についても意見が交わされた。高田氏はtoCのAI開発について、同社のAIチャットサービス「TripGenie(トリップジーニー)」を紹介。同時翻訳機能に加え、撮影した観光名所の写真をチャットにアップすると日本語で解説される機能を紹介した。
トークイベントの様子。鳥海氏(左)と高田社長が、最新トレンドやオーバーツーリズムの解決策について議論した