日本航空、東北大学、ウェザーニューズ、DoerResearchの4社は9月24日、「リアルタイム乱気流予測プロジェクト」が国土交通省の「交通運輸技術開発推進制度」に採択されたと発表した。航空機の安全性向上と環境負荷低減を目指す画期的な取り組み。

国内航空事故の55%が乱気流に起因
「晴天乱気流」は視覚的兆候がほとんどなく、レーダーでも捉えられない危険な現象だ。近年の国内航空事故の約55%が乱気流によるものであり、地球温暖化の影響で過去40年間に発生頻度が55%も増加している。安全確保と効率的運航の両立が急務となっている。
既存の予測システムは広範囲での更新頻度が低く、変化する空の状況に対応できていないのが実情。本プロジェクトでは、全球数値予報や高解像度気象解析に加え、飛行中の航空機から取得するリアルタイムデータを統合的に活用する。さらに機械学習で情報を統合し、実用レベルのAI統合型リアルタイム乱気流予測システムを構築する。
既存手法の課題を解決
既存手法には二つの課題があった。一つは予報が広域すぎること。日本上空に過剰に広範囲な乱気流予報が発生しており、運航判断に使うには粗い情報だった。もう一つは更新頻度の不足。予報時から状況がすでに変化してしまうケースが多発していた。
本研究では、先行研究で得られた乱気流の知見とAIによる解析を合わせ、詳細な予報を実現する。また飛行機から得られる気象情報を予報に反映することで変化に追従し、リアルタイム更新を可能にする。
2027年以降の社会実装へ
このシステムにより、国際線のような長時間飛行や、便数が少ない海上などの地域でも高精度で最新の乱気流予測情報が提供可能になる。乱気流の予測精度とリードタイムを向上させ、安全水準を引き上げるとともに、高度変更や余剰燃料搭載を抑制できる可能性もある。結果として、燃料費の節減やCO2排出削減といった環境・経済面の効果も期待されている。
プロジェクトでは、日本航空が運航者の視点からプロジェクト全体を牽引し、東北大学が科学的な気象データ解析を担当。DoerResearchが予測モデルを開発し、ウェザーニューズがサービスの提供体制を構築する。4社がそれぞれの強みを活かし、実用化に向けた一気通貫の体制で研究開発を進める。
今後は予測の細密化・高精度化を図り、その後、最新情報の提供へと開発を進める。2027年度には複数の路線や機種で運航トライアルを実施し、リアルタイム更新の模擬事例を拡充することで社会実装を目指す方針だ。





