【2025教育旅行レポート】愛知県立東浦町立東浦中学校(関西方面、25年6月24~26日)


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 教育旅行は、楽しい思い出づくりにとどまらず、生徒にとって絶好の成長の機会でもある。自ら計画し、仲間と協力して行動する中で、責任感や判断力が育まれる。自主性をどう引き出すか―。今回は2校の実践事例を紹介する。

自ら企業選び、アポ取りまで
主体性が学ぶ楽しさ引き出す

 愛知県知多郡東浦町は、知多半島の付け根に位置し、都市部に近いながらも緑豊かなベッドタウンだ。同町の中心部にある東浦中学校(二村圭史校長)は、全校26クラスの大規模校。日本国籍以外の生徒が5%ほど在籍しており、生徒たちは普段から、文化や背景の違いを肌で感じ、互いに尊重し合いながら生活している。
 
 「当校の一番の特徴は、生徒の自主性を重んじる点」と話すのは、第3学年を担当する篠嵜瞬教諭。日ごろから、生徒が自ら考え、実行する場面を重視しているという。

 同校では例年、東京ディズニーリゾートなどでの研修を含む、関東方面での修学旅行を実施してきた。だが今年度は、大阪・関西万博が開催されることから、万博会場での研修を盛り込んだ関西方面での修学旅行の実施を決めた。万博で、世界各国のSDGsについて学習ができることや、バス移動のため6月末の比較的空いている時期に旅行ができ、クラス別研修の候補地を幅広く設定できることなどが主な理由だ。

 旅程は、1日目昼~夜にユニバーサルスタジオジャパンで班別研修を実施。2日目の午前中に万博研修、午後にSDGs企業訪問研修を行い、神戸に宿泊。3日目にクラスごとに選んだ「西陣織会館」「甲賀の里忍術村」などでクラス別分散研修を行い、そのまま帰校するというもの。

 社会性や今後の生き方を学ぶとともに、学年やクラス、班での絆を深めるとの目的を設定。併せて、万博研修や企業訪問研修を通して、SDGsに向けた世界各国や日本、大阪の企業の取り組みを主体的に学ぶことも目的に掲げた。事前学習などを含め、一番注力したのは、今回初めて生徒たちが自ら訪問先を決め、アポイントメントも取る、企業訪問研修だ。

 企業訪問研修のテーマであるSDGsについては、2年生の4月から学習を始めた。17項目を各クラス2、3項目ずつ担当して調べ学習を行い、9月に学年で発表。その後各自が興味を持つSDGsの項目と詳細な内容ごとにグループ分けを実施。冬休みには、各自のテーマに沿って、SDGsに関連する在阪企業調べを課題とした。

 1月には類似テーマを持つ生徒同士でSDGs班47班を決定。班テーマ、個人テーマを設定するとともに、テーマに沿った訪問先企業を班ごとに選び、ホームページや電話で生徒たち自身がアポイントメントを取った。「いたずらと思われたり、5社連続で断られる班が出たり、生徒たちは大変苦労したが、どの企業にも丁寧に対応していただいた」と篠嵜教諭。最終的に、大手企業から地元中小企業まで35社に分かれて企業訪問研修を行った。

 万博研修の後、生徒たちはそれぞれのアポイントメント先に向かった。訪問場所を間違えるアクシデントなども一部あったというが、全ての班が無事に企業を訪問。各担当者から、事前に送付した質問に回答してもらったり、提供しているサービスや製品に実際触れさせてもらったりした。

 旅行終了後には、訪問企業に対し、生徒が企業訪問で学んだことや感じたことをまとめて送付した。生徒たちからは「環境にやさしい製品づくりの難しさを学ぶことができた」「障がい者への接し方など新しく学ぶことができた」など、テーマに関する感想に加え、「人生で初めてオフィスを見学した」「社員の方同士の仲の良さがあふれるやりとりに緊張がほぐれた」など、仕事の現場や働き手についての感想も多数挙がった。

 例年とは異なる、万博やUSJへの旅行ということで、当初生徒からは不安や不満の声もあったという。だが終了してみると、企業訪問研修の楽しさや充実感を語る生徒もいたそう。行き先選定理由であった万博研修は、短時間だったことや、訪問パビリオンが事前に決まっていたことなどもあり、あまり生徒の印象に残らなかったようだ。

 篠嵜教諭は「万博のパビリオン見学もだが、大人が行き先を決めて『行かされ
た』だけでは何もならないということではないか。普段発表などしていない生徒からも『SDGsの発表が楽しみだ』との声が聞かれている。教員の負担は大きかったが、生徒自身が主体的に関わったからこそ実現した、『学びになる楽しい思い出』が得られたのが良かった」と手応えを語った。

 同校では来年以降、再び関東方面での修学旅行に戻す予定。東京の企業などのSDGsに関する取り組みを学んだ後、東浦町でできるSDGs活動案の提案などにつなげる考えだ。


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