運輸総研、地域交通制度の革新を国交相に要請


 運輸総合研究所は9月22日、「地域交通制度の革新の実行を求める要請」を中野洋昌国土交通大臣に提出した。同研究所が今年6月30日に公表した緊急提言「地域交通制度の革新案」を具体化・実現するため、次期通常国会での立法化を求める内容だ。

危機的状況の打開目指す

 国土交通省大臣室で行われた要請では、運輸総合研究所の宿利正史会長をはじめ、関西大学の宇都宮浄人教授、広島電鉄の仮井康裕社長、両備グループの小嶋光信代表、名古屋大学の林秀弥教授、みちのりホールディングスの吉田元代表取締役グループCEO、運輸総研の城福健陽特任研究員の7名が参加。中野大臣に要請文と緊急提言を手渡し、その必要性を説明した。

 地域交通を取り巻く環境は長期にわたり厳しい状況が続いている。令和5年度には年間約2500キロものバス路線が廃止されるなど、地域交通事業の存立自体が困難な危機的状況に陥っている。さらに新型コロナウイルス禍の影響で移動需要が以前の水準に戻らず、交通事業者の経営悪化が長期化。運転士不足も今後一層深刻化すると見込まれている。

公共財としての位置付け明確に

 要請では、競争を前提とする現行制度から、「共創・協調」へと転換する必要性を強調。地域交通を「公共財」「社会資本」と明確に位置付け、健全な地域交通事業の存立を図る制度への革新が急務だとしている。

 緊急提言の主な内容には、地域交通の確保責任主体を自治体とすること、道路を活用した人の輸送サービスを提供する事業を「自動車交通事業」として再整理すること、国・自治体による公的負担の根拠を「支援(補助)」ではなく「委託への対価」とすることなどが含まれる。

 運輸総合研究所は、今回の要請を受けて、法改正を含めた地域交通制度の革新が早期に実現するよう、引き続き関係各方面に働きかける方針だ。

四半世紀ぶりの抜本改革へ

 緊急提言の背景には、1996年の運輸分野の需給調整規制廃止から約四半世紀が経過し、社会経済状況が大きく変化したことがある。規制緩和後、競争による利用者利益の保護・利便増進を図る制度改革が進められてきたが、人口減少などを背景に「競争から協調・共創へ」と考え方の転換が求められている。

 「地域交通制度の革新案」では全27項目を提言。基本的な考え方として、地域交通が国民の生活の質向上や地球環境保全、国土強靭化、地方創生などに貢献する「社会資本」であり「公共財」であるとの認識を示している。

 運輸総合研究所によれば、約3年間にわたり交通事業者、有識者、行政関係者との議論を重ねて今回の緊急提言をまとめたという。今後、次期通常国会での立法化に向けた動きが注目される。

 

 
 
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