
体験型観光が日本を変える
夏休みが終わり9月に入ったウイークデーに、ロサンゼルス空港経由でラスベガスに飛んだ。航空機は空席があると思いきや往復ともに満席である。成田発の日本国籍の航空会社で、日本人より外国人の方が圧倒的に多い。これは、アメリカブームではなく日本ブームである。
砂漠の平原に開けたカジノとショーの街である。ある一角だけに高級リゾートホテルが軒を連ね、ショッピングセンターやモールが隙間を埋めている。カジノは空港内からホテルはもちろん、あらゆるところに点在しているので探す必要がない。お金を使う場所には事欠かない。
食費もハンバーガーとポテト、エビが5匹の天ぷらとビール2杯が1万5千円と驚くほど高い。トマトソースベースの具のないパスタとビール1杯で5800円である。日本なら居酒屋でいくつかの料理と数杯のお酒を飲む金額となる。げに恐ろしき食費の高さかな。
4日間の滞在で日本人はホテルでは1人も会わず、街中で数人である。円安に起因する物価の高さは日本人の足を遠のかせている。ラスベガスからの定番のグランドキャニオン日帰りツアーに参加したが、日本人ツアーは4人であったが、欧州系は大型貸し切りバスである。
参加者としては楽であるが、業界人としては寂しい限りである。早朝6時に出発し、18時に帰着する12時間のツアーである。走行距離は片道450キロ。東京から琵琶湖までの距離で、東京から滋賀県まで日帰りの、実に900キロの旅である。
高速道路が多く、車は時速115キロで走って成立している。ドライバーは2人態勢であるのは安全上必要なことだ。長い距離の往復なので苦痛だろうと思っていたが、世界的に有名な世界自然遺産の観光地とあっての高揚感も手伝ってか、車窓からの雄大な景色は飽きることはなかった。
渓谷の長さは410キロもあり、われわれは対岸までは幅16キロの展望台に行った。とにかく、スケールの大きさは観光地として群を抜いている。日本に置き換えれば存在するかしないかは別として、新宿から上高地(266キロ)まで、往復12時間のツアーになる。
もちろん、ツアー代金もレートの悪さもあり、1人約3万5千円と日本での概念を超える。帰る前日にロサンゼルスのサンタモニカに立ち寄った。海風さわやかで気温25度と快適である。
ここまで戻ると日本人がちらほら見える。機内の隣の席の親子4人連れに「お金持ちですね」と声を掛けたら、「10年かかってためたお金で来ました。大谷翔平が現役活躍中に見たかったので」との話があった。街にも、機内にもドジャースカラーのTシャツやLAの帽子が目立つ。大谷翔平効果が見て取れる。その効果がなければ日本人が行く目的地にはならないかもしれない。
成田空港からの帰りの電車は人とスーツケースで満員で、ほとんどが外国人であった。日本人が肩身が狭い観光業界や日本社会は、効率、能率、付加価値創造など、労働生産性の向上と経済成長にかかっている。働かないで豊かさは得られない。