
地域創生と観光ビジネス
兼任する中央大学では、グローバル人材育成を目的にインターンシップ科目「国際観光コース」を12年前に立ち上げ、在外の観光省庁派遣を担ってきた。コロナ禍で一時、中断していたが、大学からの要請で再開することになり、夏のタイをめざした。
タイ国政府観光庁東京事務所の藤村喜章さんに世話になり、アユタヤ支局での実習を前半に組み込んだ。後半は、自らがバンコクで引率した。FMノースウェーブにも協力を仰いだ。番組リスナー対象のタイツアーで人気のコンテンツ「プーム・ジャイ・ガーデン」でのタイダイ(絞り染め)や料理体験では、コミュニティベースドツーリズムに触れた。
また、ナイトタイムエコノミーの学びでは、伝統舞踊のディナーショーだけでは飽き足らず、番外編でニューハーフショーを急きょ盛り込んだ。ダンサーの美貌に度肝を抜かれたのは言うまでもない。これもまたタイにおける重要な観光経済で、夜の観光消費には光と影があるのを知れた。
個人的に印象に残ったのが、サムットプラカーン県にあるバンプー自然保護センターでのマングローブ植樹体験だった。その名も「日本旅行マングローブの森」。学生と一緒に泥だらけになりながら、環境保全活動に従事した。
フィナーレは、タイ人家庭でのホームステイだ。同コースの1期生で教え子の齋藤優亮さんが提案してくれた。彼は法学部を卒業後、ヤマハ発動機に入社してタイ現地法人を担当した。それが家業を継ぐため一念発起。国立コンケン大学大学院へ進み、タイ語を駆使しながら建築学修士と一級建築士をめざしている。タイヤマハにローカルスタッフとして勤める友人のサランさんに相談して、今回のホームステイが実現した。
好青年で日本語も堪能なサランさんや家族から鍋パーティーで歓待を受けた。彼の居室で一夜を明かした学生は、実はバイクが趣味。偶然にもヤマハに乗っていたから、意気投合した。タイの人たちの温かさを感じた。
さて、今回のバンコクではうれしい再会もあった。かつてタイ国政府観光庁福岡事務所に勤務し、ファムツアーでお世話になった陣内幸子さんである。現在、明太子のかねふくの現地法人・KANEFUKU(タイランド)でMDを務めている。筆者が投宿したホテルJALシティバンコクまで会いに来てくださった。この日は、ちょうど日曜日。学生たちは自由行動の最終日だったので、同社が輸入・販売する商品を扱うフジスーパーなどを2人でめぐりながら、楽しく休暇を過ごした。
その夜、齋藤くんが行きつけのイサーン料理の屋台「ラープ ラップ ラップ プリディ43」で打ち上げをした。陣内さんはじめタイ国政府観光庁公認のインフルエンサーや、学生の友人つながりでエクアドルからの三姉妹も飛び入り参加して総勢9人が集った。こうした経験や出会いが、若者たちの今後の人生に大きな影響を与えることだろう。
末筆となるが、タイ国政府観光庁本庁の鹿野健太郎さん、東アジア局マーケティングオフィサーのスティダー・チャオコックさんには、心から御礼申し上げます。愛知セントレアでの「ツーリズムEXPOジャパン2025」で、またお会いしましょう!
(淑徳大学経営学部観光経営学科学部長・教授 千葉千枝子)