【地域創生と観光ビジネス77】JWTC勉強会で熱弁「旅行業と観光教育のこれからを考える 淑徳大学経営学部観光経営学科学部長・教授 千葉千枝子 


 東京・四谷の主婦会館で5月、JWTC「日本旅行業女性の会」主催の第1回勉強会が開催され、「旅行業と観光教育のこれからを考える~JWTCがより発展するために」と題して講演した。
 
 聴講者は会員以外にも、グローバルユースビューローの古木康太郎相談役やマイルポスト・榊原史博代表など、業界発展をけん引されたビジターが多数、ご参加くださった。ここに御礼申し上げる。
 
 講演では、自身のキャリアや教育旅行セールスの実例、観光を学ぶ意義や観光人材育成の重要性、JWTCへのメッセージなど盛りだくさんに熱弁をふるった。
 
 私ごと、大学教授に転じて10年。うち8年を学部長職に奉じた。この間に経営学部は骨太体質になり、埼玉から東京へのキャンパス移転も完成年度を迎えた。18歳人口の減少で大学を取り巻く環境は厳しさを増しているが、学部の定員管理や就職内定率を改善させ、上昇気流のなかにある。大学認証評価では、他大の評価委員を務め、一端(いっぱし)の大学人として経験を積むことができた。人生の大きな勉強になった。
 
 さて、講演のなかで反響があったのが、「今さら聞けない大学の経営と仕組みについて」だった。観光教育は、実務家教員と学術系との絶妙なせめぎあいのなかで成り立つ。専任と兼任、特任・客員の別、教授・准教授など職位の違いが、分かっているようで実は判然としない業界人が多い。基幹教員制度の導入や人口減で、観光系の実務家教員の門戸は今後、少しずつ狭まることだろう。
 
 そもそも大学人材は、教育職員(教員)と事務職員に分かれる。観光の現場から大学へと転じた人は事務職員にも多く、知識も豊富だから、さまざまな場で助けられている。教職協働は大命題で、そこに上下の関係はない。教育旅行(受注型企画旅行)は教員のみで決めることはできず、職員だけでもない。「最終的な決定権者や、どのようなプロセスで採用されるのかを調べあげ、動画も含めたプレゼン訴求力や仕入力、安心・安全の優位性など自社の強みを明示して旅を売ってもらいたい」と、ステークホルダーの一員として、話をさせていただいた。
 
 それが近ごろ職員から「千葉先生!」と声がかかり、「相見積をお願いしたら“旅は売らない”と断られたんですが…」とけげんそうな顔をしている。「旅行会社ですよね?」とも。公務取り扱いや新規事業の創出も重要だが、何かが崩れ始めているようだ。
 
 さらに苦言を呈するなら、総じて旅行業は、いまだ男性優位の業界体質が色濃い。女性役員の登用人事も結局は、男性役員が決めている。ガソリンやコメに国費を投じる時代。トランプ政権で経済の先行きは不透明さを増している。パスポートの無料配布をという提言は、今に思えばやや、乱暴だったのではなかったか。また、政府がインバウンドの消費税免税廃止案を検討しているが、観光による歳入は、観光を使途に歳出することを業界が声高に叫ばなければならない。ここ数年、筆者は学術研究費や公募事業で公的資金を獲得する機会に恵まれた。業界は、社会貢献活動の一環に、研究機関やNPOなど非営利団体と組むようなスキームをもっと描くべきだ。

 愛ある苦言です。お許しください。

 (淑徳大学経営学部観光経営学科学部長・教授 千葉千枝子)=隔週掲載

 
 
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