
「今期も営業利益がマイナス300万円でした」「ここ5期連続で赤字が続いています」「来期もおそらく同じような着地になるでしょう」
このような報告をすると、銀行から「せめて営業利益は黒字にしてください」と即座に言われ、慌てて営業利益100万円という数字を設定する。そして売上高と経費を「つじつま合わせ」で調整して経営計画を完成させる―。
お宿経営者にとって、損益計画の策定は「面倒な作業」かもしれません。成績が芳しくないため、できれば目を向けたくない。その気持ちは十分理解できます。
しかし、このようなアプローチでは、銀行に納得してもらうための対策にしかなりません。本当にお宿を良い方向に向かわせる具体的な目安や行動は、見えてこないのです。
経営者である以上、自分の宿を良い状態に持っていく義務があります。そのためには「わが宿の理想とする損益モデル」を明確に持っていなければなりません。
あるお宿では、銀行からの要請で、経営者が顧問税理士と経理担当者を交えて次年度損益計画を作成することが恒例となっていました。しかし、そこで行われていたのは前年実績をベースにした「つじつま合わせ作業」でした。銀行はこれで良しとするかもしれません。なぜなら、必要最低限の数値と趨勢(すうせい)から、返済のめどを判断するのが彼らの役割だからです。
本当の問題は、肝心の経営者自身が将来を見据えていないことです。そこで現状ベースを続けた場合の5年後を試算してみました。結果は衝撃的でした。
下降トレンドが進み、じわじわと累積赤字が拡大し、資金繰りはキャッシュアウトする見込みとなったのです。「これはあなたが目指している5年後の姿ですか?」。経営者は返す言葉がありませんでした。
そこで今度は、本来あるべき損益の姿を作成することにしました。ポイントは、利益の配分を明確にすることです。
1.借入金返済―約定通りの返済を確実に実行
会員向け記事です。