【駅メロとわずがたり45】西武東村山駅(1) 志村けんを育んだ故郷 藤澤志穂子


志村けんさんの銅像

 「東村山」といえば「志村けん」。地域の民謡「東村山音頭」の替え歌を、ドリフターズの超人気番組「8時だヨ!全員集合」でけんさんがユーモアたっぷりに披露して大ヒットしたのは1976年だった。最寄り駅である西武鉄道東村山駅(東京都東村山市)の発車メロディに採用されたのは、それから40年近くたった2014年12月、東村山市政50周年を記念し、1年3カ月ほど使われた。けんさんが、コロナ禍の2020年3月に逝去したことをしのんで同年7月14日に復活、健在ならば東京五輪の聖火ランナーとして市内を走る予定の日であった。代走した兄の知之さんは四つ年上で、元東村山市役所職員。「弟は駅のメロディになったことを喜んでいましたよ。今回もそうでしょう」と話す。

 都心から急行で30分あまり、東村山駅の東口に降りると、3本の大きなけやきの木が出迎えてくれる。「志村けんの木」と、けんさん直筆の案内板がある巨木は樹齢が約50年、「東村山音頭」がヒットした1976年に、東村山市が、全国的に有名になった功績をたたえ、市の木でもあるけやきを植樹した。左側には志村けんさんの銅像、人気キャラ「バカ殿様」が「アイーン」を披露している。こちらはけんさんの逝去後に市の青年会議所メンバーなど有志がクラウドファンディングを全国から募り、約6600人から約2700万円を集め、2021年6月に設置された。塑像のモデルを務めたのは知之さんで、背格好が本人とそっくりだからだ。「今もファンの方が全国から訪ねて下さり有難いです」。

 駅前ロータリーからは桜並木が続き、その先にはけんさんの実家がある。江戸時代から知之さんまで18代続く志村本家は、もとは農家で、畑でサツマイモや小麦、野菜を家族で食べる分だけ作っていた。かつては古い造りの農家で。庭には今も立派な藤棚やツツジの木がある。祖父母に両親、その親戚が住む大家族で、けんさんは3兄弟の末っ子。「お小遣いをもらえる余裕は家になかったので、一緒にけん玉やメンコを作って遊んでいました」(知之さん)。

 父は家計を支えるために小学校教師になった。母は家事や農作業を一手に引き受けていた。父はその後、不慮の事故で仕事ができなくなり早逝、苦労は全て母に集中した。けんさんは「オヤジへの反発からコメディアンを目指したようなもの」で、芸事や踊りが好きだったという母の「血を引いたのかもしれない」とも話している。小学生の頃からコントを人前で披露し、人を笑わせていた。一方でビートルズなど当時の流行の洋楽にのめりこみ、高校生になってからアルバイトで得た金でギターを買い、畑で練習していた。高校卒業前に、すでに人気グループだったドリフターズのリーダー、いかりや長介さん宅に押し掛け、付き人になる。これは音楽バンドとしてのルーツを持つドリフに引かれたからだった。

 ◇出典:西武鉄道の世界(交通新聞社)
 ※元産経新聞経済部記者、メディア・コンサルタント、大学研究員。「乗り鉄」から鉄道研究家への道を目指している。著書に「釣りキチ三平の夢 矢口高雄外伝」(世界文化社)、「駅メロものがたり」(交通新聞社新書)など。


志村けんさんの銅像

 
 
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