一過性でなくレガシーを 観光関係者が「ふくしま創生」を議論 


パネルディスカッション

来年4~6月に福島DC

 日本旅館協会福島県支部は10日、「ふくしまDCによる福島創生シンポジウム」を福島県喜多方市の熱塩温泉山形屋で開いた。福島県、JR東日本、旅館関係者など100人以上が参加した。JR東日本執行役員東北本部長の高岡崇氏が「観光のチカラ~ふくしまDCと地域の観光振興~」をテーマに基調講演。「観光のプロたちがDCによる福島創生を語りつくす90min」と題したパネルディスカッションも行われた。

 基調講演で高岡本部長は、「観光と鉄道は人と人、場所と人をつなぐという点で深い関係がある」と指摘した。人口減少時代の現状を踏まえ、「2050年までに東北地方の人口は現在の3分の2にまで減少する。定住人口に頼った産業振興には限界があり、発想を切り替える必要がある」と述べた。

 観光産業の強みについて、「定住人口だけでなく交流人口、関係人口を相手にできる」と説明。定住人口1人減少による経済損失(年間約135万円)を補うには、日帰り旅行者71人、宿泊旅行者21人、訪日外国人旅行者7人が必要だとデータで示した。また多くの業種に波及効果をもたらす「裾野の広い産業」だと強調した。

 DCについては「麻薬のようなものではない」と指摘。「地域づくりのきっかけ、皆さんがチャレンジするフィールドだ」と述べた。来年4~6月の福島DCについて「福島県誕生150年、福島第一原発事故から15年という節目の年。復興へのチャレンジをホープツーリズムと絡めて実感していただきたい」と語った。


JR東日本執行役員東北本部長の高岡崇氏

 パネルディスカッションでは、DCの意義や生かし方について熱い議論が交わされた。

 パネリストは、福島県観光交流局局長の藤城良教氏、福島県観光物産協会理事長の守岡文浩氏、JR東日本東北本部マーケティング部長の新井貴之氏、2005福島県あいづDC推進協議会事務局長の吉田秀一氏、福島県旅館ホテル生活衛生同業組合企画戦略委員長の渡邉利生氏(土湯温泉山水荘社長)、日本旅館協会福島県支部支部長の瓜生泰弘氏(熱塩温泉山形屋社長)の6人。コーディネーターをびゅう會津会会長の平賀茂美氏(会津東山温泉原瀧・今昔亭総支配人)が、アドバイザーをJR東日本執行役員東北本部長の高岡氏が務めた。

 2005年の「あいづDC」を経験した吉田氏は「本気になってやって初めて一歩前に進める。子どもたち、孫たちの未来のためにわれわれは今本気で汗をかくべきだ」と訴えた。

 渡邉氏は2015年DCの経験から「口を開けて待っているだけでは絶対に恩恵は来ない。DCという特別な機会に何かチャレンジしてみたいという思いで始めたことが大きく広がった」と振り返った。今回のDCでは「浜通りの魅力を福島県全体の魅力として変換し、各宿泊施設が浜通りの魅力も自分の施設の魅力に変換して、お客さまに伝えることが重要」と提案した。

 瓜生氏は「このDCはあくまできっかけ。レガシー化していくことが重要」と述べ、会津、中通り、浜通りの3エリアに「横串を刺す」重要性を指摘した。守岡氏はホープツーリズムと中通り・会津を組み合わせた旅行商品開発、ウルトラマンとコラボした「ウルトラマーカベコラ」など具体的な取り組みを紹介した。

 新井氏は「地域が元気でなければ、当社も成り立っていかない」と述べ、首都圏駅での「産直市」など地産品紹介や大規模な宣伝物掲出などJR東日本の取り組みを説明。藤城氏は「地域の宝を磨き上げて持続可能な観光、それをレガシー化に向けて福島県の全員プレーで一致団結して取り組んでいきたい」と決意を述べた。

 最後に高岡氏は「DCはあくまできっかけであってDCが終わりではない。DCが目的ではない。DCがスタートだ」と強調し、平賀氏は「次世代、孫や子供に向けて、未来に向けた仕掛け作りをDCをきっかけにして進めよう」と締めくくった。
 【kankokeizai.com 編集長 江口英一】


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