
ノルディックサークル
デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデンの北欧5カ国は2日、大阪・関西万博に共同出展中の「北欧パビリオン」で、北欧の食と食文化に焦点を当てた特別プログラム「ノルディック・フードデー」を開催した。各国政府の農水トップらが参加。持続可能な食料生産などに長年取り組む5カ国の食文化や生産環境などについて説明したほか、各国でフードテックに取り組む企業が自社の事業を発表した。
北欧5ヵ国、食文化やフードテック紹介
北欧パビリオンは、「ノルディック・サークル(Nordic Circle)~北欧と共に、より良い明日へ~」をテーマに、未来志向の北欧モデルを紹介している。
ノルディック・フードデーは、在阪ホテルでの商談会「北欧フードフェア」と北欧パビリオンのレストラン監修を務めるフリーダ・ロンゲ氏などによるランチライブパフォーマンス、メディアカンファレンスで構成。スウェーデン農村庁ダニエル・リリェベリ国務次官、フィンランド農林省ペッカ・ペソネン事務次官、フェロー諸島のシリド・ステンベア外務・産業・貿易大臣らが出席した。
パビリオン内で開催したフードデー
メディアカンファレンスでは、冒頭日本と北欧の食文化が「自然への敬意」「四季と旬を大切にする姿勢」において共通点を持つことなどを紹介した上で、国ごとに持続可能性だけでなく、革新性や食の安全性と品質などの分野で世界をリードするとされる北欧の最新動向と、同地域発の日本市場に向けた新製品、事業展開を発表。
このうちフィンランドは、同国が世界第2位の輸出量を誇る「オーツ麦」などについて紹介。ペソネン次官が登壇し、その食材としての機能性や持続可能性、オーツ麦由来のタンパク質など、日本人になじみのないオーツ麦の食材としての、日本での展開可能性を説明。低農薬農作物や抗生物質の使用を抑えた畜産物などが世界中から注目を浴びている現状や、「アニマル・ウェルフェア(動物福祉)」やトレーサビリティの厳格さなどによる優位性を訴えた。
フィンランド農水次官
アイスランドは、地熱温室を使った野菜栽培など再生可能エネルギーに100%近く支えられた食品生産や、魚の副産物を活用した化粧品などの開発を紹介。「余すことなく使う」文化による産業のレジリエンスと新しい価値創造を紹介した。
デンマークは、Too Good To Go(トゥーグッドトゥーゴー、TooGood社)の日本法人代表、大尾嘉宏人代表が、取り組み内容を発表した。
大尾嘉代表
同社は2015年にデンマーク・コペンハーゲンで創設された、世界最大の余剰食品のマッチングマーケットプレイスの運営会社。フランス、ノルウェー、イギリスなど多くのヨーロッパ諸国のほか、北米など世界19カ国でサービスを展開。余剰食品を販売する約18万のパートナー企業と、購入者となるユーザー約1億2千万人が登録。廃棄されるはずだった食品約5億食を消費者に提供した実績を持つ。
日本では新たに7月に日本法人を設立し、サービスを開始した。飲食店などが余剰食品を販売するには、購入してほしい余剰食品を、各店が用意する「サプライズバッグ」に入れ、Too Good To Goのアプリに出品する。アプリ経由でサプライズバッグを購入した利用者は、指定の時間に受け取りに来る。
サプライズバッグは通常の小売価格の25~50%での販売となるが、廃棄されるはずの食品を収益化できる上、サプライズバッグを契機にした新たな顧客獲得も期待できる。販売店は同社に、サプライズバッグの販売代金の一部を手数料として支払う。
同日のプレゼンテーションで大尾嘉氏は、「フードロスの問題が指摘される中、日本は2000年に比べ22年度の事業系フードロスの量を約55%減少させたが、今後30年度までに60%の削減を掲げている。15年からアプリを使って、約5億食の余剰食品を救ってきた。当社の取り組みの根底には、事業者、消費者、社会のすべてにとって良い、『三方よし』の考え方がある。日本の文化に根付く『もったいない』の精神が組み合わさることで、日本の持続可能な食のあり方に貢献できると考えている。一緒にフードロスと戦っていきましょう」と呼びかけた。
日本国内でも同様のフードシェアプラットフォーム「TABETE」などがサービスを行っているが、Too Good To Goは、グローバルにユーザーを持つのが強み。日本国内をビジネスや旅行で訪れた外国人の購入が見込める。
同社では、ベーカリーや飲食店をはじめ、ビュッフェスタイルの食事を提供する旅館・ホテルなどとの提携を進めたい考え。大尾嘉氏は「日本は文化的に、ショーケースなどに過剰に商品を並べる傾向があり、ロスにつながっている。また賞味期限や消費期限の表示も厳格だ。だが、日本の衛生基準は世界的に見ても非常に厳しく、安全性は高い。消費者自らが『見た目、におい、味』で判断するという考え方を、事業者と一緒に啓蒙していければ」と語った。
【小林茉莉】
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