
年間休日総数 1985年~2024年(厚生労働省)
労働者平均年間休日総数は、グラフにあるように1985年の90日から2024年には年間110日になり、有給休暇取得率も2000年代は50%前後であったのが、2023年には63%と政府目標の70%に迫り、すでに年間の3分の1は休日になっている。土日と飛び石連休の中日も入れた日数は年間130日を超えた上に、近頃は連休が取りやすくなっている。
この夏はお盆に宿泊客が集中しなくなったとは北陸の旅館の話で、利用者側もピークを避けて旅行している。お正月、大型連休、夏休みなどのトップシーズン明けの稼働が落ちる時期は私などシニア層には狙い目。常時社員を抱え、日々ランニングコストが掛かる旅館業としては、シーズンオンや週末に頼るのでなく、稼働を平準化して安定的に運営することで得るところが多く、連泊やインバウンドを増やし、地域の魅力を再発見してそれを可能にしたい。
1日単位で考えると、旅館は15時チェックイン翌日10時チェックアウト、滞在19時間と大変時間の長い商売。朝食は7時から8時、夕食は6時から8時に集中し、入浴時間も朝食前の朝5時から6時、夕方4時から6時に集中し、1日のうち4時間がピークになる。
そのピークに合わせると施設が大型化し、エネルギー使用量も増え、人手も掛かる。人手を掛けて一度に大勢のお客さまに対応するよりは、少ない人手で回転を増やしたほうがエネルギー効率も上がり人件費も少なく済む。客室レンタブル比が低く、エネルギーの無駄使いの多い旅館は、1日の中でピークを分散してエネルギー高騰と人手不足を乗り切りたい。
連泊のお客さまは時間的に余裕があり、予約、フロント、清掃の手間が減る。お盆過ぎに3世代で家族旅行して気付いたのは、ピークを1日ずらすことで行きも帰りも高速道路がすいていたこと。夕食ビュッフェは混雑していると盛り上がりアトラクションのように楽しい、食べたい料理に並ぶのはあまり苦にならないこと。大浴場は混雑具合が客室で確認できると空いた時間にゆっくり入れること。2泊するとゆっくりできることであった。
エネルギー、労働生産性、そしてお客さまの満足度を同時に考える上で稼働を平準化することは有効だ。食事会場、浴室は小さな施設で施設回転率を上げるとエネルギー効率が上がり、生産性が向上する。個別ヒートポンプ空調で機器を分散化し、循環ポンプのインバータ化で入浴者数によってポンプの回転数を変えることで電気代を減らす。お客さま、従業員、経営者の三者が共にウェルビーイングになる運営を考えたい。
(国際観光施設協会理事 エコ・小委員会委員長、日本建築家協会 登録建築家、佐々山建築設計会長 佐々山茂)
年間休日総数 1985年~2024年(厚生労働省)