【焦点課題】国際観光施設協会 会長 浅野一行氏に聞く


浅野氏

技術的視点で課題解決

ロボット活用へ環境整備 フェーズフリーの推進も

 ――6月の通常総会を経て会長に就任された。

「お話をいただいた時は相当悩み、いろいろな方に相談したが、やりがいのある役職なのでお受けした。この数カ月は、協会の運営や活動について役員の皆さんと議論を深め、具体的に動き出したところだ」

 ――ご本職は建築士とうかがっているが。

 「ホテルの設計、建築のスペシャリストとして働いてきた。専門分野にホテルを選んで25年以上になるが、振り返ると、大学の卒業設計もホテルが課題で、ホテルという非日常の空間、建築としてのホテルに興味があったのだと思う」

 「日本設計時代には、JR東日本建築設計に出向して東京ステーションホテルのプロジェクトを担当した。現在、在籍しているスターツグループのフラッグシップホテル、ホテルエミオン東京ベイなども手掛けた。現在も、ホテルをメインに住宅以外の建物の設計などに携わっている」

 ――協会で活動するようになった経緯は。 

 「15年前、当時の中山庚一郎会長のもと、『国際ホテル・レストラン・ショー』への出展を統括するホテレス実行委員長を任されたのがきっかけ。当時は協会の委員会活動が活発化してきた時期で、それをホテレスで発表しようという機運が高まっており、委員長には若手を起用したいとして打診があった。それ以来、2年前までホテレス実行委員長を続けてきた。協会を俯瞰(ふかん)できるポジションで、いろいろな委員会や部会のまとめ役として動けたことはとても良かったと思う」

 ――これまでの協会活動で印象深いことは。

 「2024年1月の能登半島地震を受けて設置した能登半島被災地復興支援委員会の活動だ。24年8月に2泊3日の被災地訪問に参加し、各地を視察した。復興において重要なのは、石川県が掲げている通り『創造的復興』。当協会では、能登ヒバ、能登上布、能登仁行和紙、輪島塗などを『能登の光』として、それらを会員企業が観光施設に活用する取り組みなど、新たな商品づくりやビジネス創出につながる10を超すプロジェクトが立ち上がっている。現地の事業者を元気づけ、創造的復興を継続的に支援したい」

 ――会長として特に力を入れたい取り組みは。

 「観光産業は今、非常に上向いており、インバウンドは今年4千万人に到達するといわれる。さらに2030年の政府目標は6千万人、消費額15兆円だ。一方で観光分野にはさまざまな課題が顕在化している。私たちは、ハードを扱う唯一の観光団体として、技術的な視点からこれらの課題解決に取り組み、観光が健全な未来が迎えられるようにしたい」

 「具体的な取り組みの一つが観光DXの推進。人手不足やオーバーツーリズム、集客の地域格差などの解決策として重要だ。例えば、ロボットの活用には、単に機器の導入というだけでなく、ホテルや観光施設といった建物側の環境整備が不可欠。ロボットフレンドリーな環境整備の研究として7月から勉強会を始めた。日本ホテル協会とも連携して検討を進める。ロボットメーカーだけでなく、ホテルオペレーターの視点を加えて成果を上げたい」

 「『LINKED CITY』という活動も進めており、自治体との連携が具体化しつつある。これはテクノロジーでホテルと地域をうまく結びつけ、旅行者の利便性向上、事業者の生産性向上はもとより、非常時には防災的な役割も果たすフェーズフリーな取り組みとして推進している」

 「さらに忘れてはならないのが南海トラフ地震や首都直下地震に対する備えだ。フェーズフリーの考え方を中心に、耐震化の促進も積極的に進めていく必要がある。また、宿泊業や地域の脱炭素などに貢献する『エコ・小活動』、ユニバーサルデザイン客室の研究、木材の利用を促進する『木づかい活動』なども引き続き推進していく」

 ――観光業界や関係団体との連携、協会運営の方針については。
 
 「さまざまな団体や企業、地域との連携を積極的に進めていきたい。会員に対しては、加盟のメリットをきちんとつくっていく。協会を通じたメーカーと設計者の接点づくりといったニーズにも応えながら、協会の調査研究活動をしっかり進めていく。そうしたバランスが重要と考えている」


あさの・かずゆき=東京都出身。横浜国立大学大学院修了。1987年4月日本設計事務所(現・日本設計)、2013年6月国際観光施設協会理事、同年10月スターツ総合研究所(現在、理事)。21年6月同協会副会長。休日には登山も。一昨年には北アルプス立山連峰の剱岳に登頂した。64歳。

【聞き手・観光経済新聞 副編集長 向野悟】

 
 
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