
興居島(ごごしま)という名前を聞いたことはあるだろうか。道後温泉などで知られる愛媛県松山市の西側に浮かぶ有人島だ。斜面にはミカン畑が広がり、夏には海水浴などでにぎわう風光明媚な興居島に、近年、空き家となっていた古民家を活用した民泊施設が続々とオープン。Airbnb(エアビーアンドビー)経由で国内外の旅行者が多数各施設を利用し、興居島での滞在を楽しむ姿が見られるようになってきた。興居島でリスティングを提供する民泊施設のホスト(施設運営者)にお集まりいただき、民泊運営のきっかけや魅力などについて語ってもらった。(7月18日、愛媛県松山市「古民家宿 傳次」で)
<前編>空き家再生民泊が生む 新しい交流とエコシスエム 愛媛県興居島の事例(1)~Airbnb×民泊施設運営者×愛媛県知事 座談会

島の駅 ごごしま
古民家再生民泊の開業を契機に 島内に新施設が続々と
興居島では2022年から空き家が民泊として活用され、現在では15軒が営業している。これにより、従来宿泊施設がなかった人口800人ほどの島に、24年度は1500人以上が宿泊するようになった。宿泊者の増加に伴い、新しい飲食店などもでき始めた。以前から空き家の仲介など島の振興に取り組んできた、ごごしまフェリーの山下峰さんは「民泊が増えたことをきっかけにさまざまな店舗ができて、島での楽しみ方が増えた。フェリーも住民以外の利用者を見るようになった」と変化を語る。
ごごしまフェリーでは、飲食店「島うどん」に続き、今年4月、由良港のフェリー乗り場の目の前に、新たな観光施設「島の駅ごごしま」を開いた。島の特産であるヒジキはじめ、ミカンを使ったゼリーやジュースなどの商品をラインアップ。スタッフが常駐して、ドリンクやソフトクリームなども販売する。またクロスバイクやタンデム自転車などをそろえたレンタサイクルのベースとしても機能。島に滞在する外国人などが島をめぐる拠点にもなっている。
島の駅ごごしまの隣には、新規事業者の草分け的存在である大本直樹さんが営むコーヒースタンド「cotton john coffee」がある。こだわりの自家焙煎コーヒーは島内外の人から広く支持を集めており、コーヒー片手に島を巡る人も多い。コーヒー豆を買う島民の常連も増えた。
民泊施設が集まっている由良港近くにある、同じく古民家を利用したマイクロブルワリー「ごごしまビアファーム」も人気のスポット。神奈川県横浜市から移住した南雲信希さんが、興居島の摘果ミカンなど地元食材を使い、サステナブルなクラフトビールやミカンジュースを製造、販売する。cotton john coffeeとコラボレーションしたコーヒービールも楽しめる。
由良港から離れた場所でも、観光客が立ち寄るスポットが点在する。アフリカ好きの石川真里さんが開くミカン農園併設のカフェ「CAFE NAWANAWA」もその一つ。8月には空き家を改装したゲストハウスも開業し、Airbnbに掲載。新たな島旅の拠点として期待される。
空き家活用による民泊と、来訪、宿泊者の拡大が、今後島にどういった活力を与えていくのか、ますます目が離せなくなりそうだ。

座談会の様子
企画・取材協力=Airbnb J apan Airbnbは、2人のホストがサンフランシスコの自宅に3人のゲストを迎えた2007年に誕生しました。と地域で20億回を超えてゲストをお迎えしてきました。訪れるゲストが街や人とのつながりを肌で感じられるよう、ホストの方々はユニークな宿泊先やほかではできない体験、特別なサービスを日々ご提供くださっています。https://www.airbnb.jp/