運輸総合研究所、持続可能な観光地域の交通サービスのあり方を提言


 運輸総合研究所は3日、「地域観光産業の振興・事業革新に関する提言(2023年7月)に基づく『観光バリューチェーンにおける交通のあり方検討委員会』とりまとめ」を公表した。観光地域の交通サービスのあり方について、地域特性に応じた具体的施策を示したもので、地域観光産業の生産性向上と持続可能な地域経済・社会の実現を目指している。

観光を取り巻く環境の変化と担い手不足

 報告書では、観光を取り巻く環境が変化する一方で、担い手の高齢化や不足、多様なニーズへの対応、新たな観光資源の創出とその持続可能性に課題があると指摘。担い手、資金力、販路確保の三位一体的な改善が必要だとしている。

 観光交通に関しては、都市部や郡部では観光交通サービスが整備されている地域がある一方、過疎地や離島ではフェリーやフロンティア路線の維持が困難になっているという現状を報告。地域住民の交通手段不足や観光交通サービスの質の低さも課題として挙げている。

地域特性に応じた観光交通サービスの提案

 報告書では地域特性に応じた観光交通のあり方を整理。サービス供給主体、サービス提供主体、サービスの形態、関係機関の連携、サービスの質など多角的な観点から必要な検討対象と対応策を提示している。

 特に注目すべきは、DMO(観光地域づくり法人)の役割強化だ。DMOが観光交通サービスの主体となるケースや、地域公共交通事業者との連携のあり方について言及している。一方で、地域特性によっては公的機関や民間事業者が主体となる形態の方が効果的な場合もあるとしている。

DX推進による観光交通の質の向上

 報告書では、観光交通サービスの質を高めるためにDX(デジタルトランスフォーメーション)の活用が不可欠だと強調している。バスのデータ活用やMaaSシステムの導入が観光客の利便性向上に効果的だとしている。

 また、スマートモビリティによるアクセシビリティ向上や、観光客の安全・安心を重視した観光交通の整備も必要だと指摘。観光客のニーズ把握や多様な交通手段の提供、効果的なサービス提供体制の構築、データの利活用とその効果検証といった一連のPDCAサイクルの重要性も説いている。

地域住民と観光客双方の満足を目指す

 観光地の活性化には、地域住民と観光客双方を満足させる交通サービスが不可欠だと報告書は指摘。地域公共交通と観光交通サービスの役割分担を踏まえつつ、地域住民の生活空間を維持しながら観光客の利便性を向上させる具体的施策の提示を行っている。

 運輸総合研究所は「本とりまとめが、今後の観光地の活性化を図りながら地域公共交通と観光交通のあり方を検討するとともに関係機関と各事業者の施策の進捗に資することを期待する」としている。地域観光産業の活性化に関する情報は同研究所のウェブサイトで公開されている。


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