【体験型観光が日本を変える409】自由を生かせない子どもたち 藤澤安良


 夏休みが終わった。私が子ども時代は、もっと夏休みが続けばいいのにと思っていた。親は早く学校が始まればいいのにと思っていた。

 現代の子供たちは、家族旅行など夏休みにしかできない遊びや体験ができただろうか。楽しく有意義な夏休みを過ごせただろうか。塾や受験勉強に終始した子ども少なくないだろう。そして、新学期には楽しく学校へ行ってくれるのだろうか心配である。

 夏休みの最終週のテレビ取材では、まだ夏休みの宿題は追い込みか駆け込み中か、できていない子どもが多かった。読書感想文は本を読む習慣や時間がないと考える子どものために、代行業者まで存在するというから情けない限りである。また、自由研究も何をテーマにすればいいのか、何をしたいのかも考えられないという。自由なのだから何でもいいのだが、決められたり、絞り込まれたりすることに慣れている。本当の自由は生かしきれず、持て余すようである。

 過日は、信州の景勝地に出掛けた。豊かな美しい自然の高原を走るバスの中は夏休みとあって、推定年齢が小学生、中学生、高校生ぐらいの親子連れの観光客が乗っていたが、その子どもたちは車窓からの風景は全く見ないで、スマホの画面ばかりを見ているではないか。何のために旅行に来たのか、旅行が猫に小判になっている。

 自由が人を高める場合もあるが、その自由で自制が効かなかったり、怠惰な道を選んだり、もったいない人生になる。

 オーストラリアは16歳未満のSNSの使用を禁止する法案が可決され、今秋から施行される。大人の世界でも、ネットはネットバンキング詐欺、国の機関や警察に成りすました詐欺、スターやあこがれの人物に成りすましたロマンス詐欺など、多くの犯罪に利用されている。2024年の特殊詐欺とSNS型投資・ロマンス詐欺の合計額が過去最悪の約2千億円に達している。また、生産性のないスマホとのにらめっこは大きな時間的経済的な損失である。

 そんな中、インターネットのSNSによる誹謗(ひぼう)中傷に関する条例の制定に向けた動きが相次いでいる。さらには、スマートフォンの使用時間を2時間以内とする条例が愛知県の豊明市で提出された。罰金や罰則はないとしている。

 自由な国で、なぜ時間制限をされなければならないのかと思う人も多いはずである。ネット社会で失われているものも多く、スマホに偏った暮らし方に警鐘を鳴らしているものと理解している。

 現場に行かなくても得られる風景と情報があり、人と会わなくてもその人と文字でのやり取りはできるが、おかげで人と話すことや交渉も、自分の意見を言うことも苦手な人が増えている。コミュニケーション能力も人間力も退化していると感じる。ほんものを知っていると物足りなく、寂しい。

 スマホが発達した時代だからこそ、大切なものがある。それは年齢を問わず、旅に出て、じかに人と会って話し、さまざまな体験をすることである。豊かで、潤いある人生に欠かせないものでもある。

 
 
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