モビリティDXカンファレンス「地域共創で切り拓く未来のモビリティ社会」開催


開会あいさつをする水嶋国土交通事務次官

 モビリティDXソリューションのWill Smart(東京都江東区、石井康弘社長)は8月19日、モビリティDXカンファレンス「地域共創で切り拓く未来のモビリティ社会」を都内で開いた。デジタル技術を通じて「交通」「観光」「まちづくり」を横断的に捉えなおし、持続可能な地域社会の実現に向けて官民の共創の可能性を探った。

「交通空白解消」に向けた国の取り組み

国土交通事務次官 水嶋智氏

 

 カンファレンスの冒頭、国土交通省の水嶋智事務次官は「地域交通問題は様々なステークホルダーの皆様で考えていく必要がある」と述べた。国交省では昨年7月に大臣を本部長とする「交通空白解消推進本部」を立ち上げ、令和7年から3カ年を「交通空白解消集中対策期間」と位置づけて取り組みを進めている。

 「今までは事業者の皆様の事業や競争に重きを置いた交通政策だったが、少子高齢化で担い手が減っていく中、地域公共交通のニーズはむしろ多様化し増大している」と水嶋事務次官は指摘。「テクノロジーを持つ産業界の皆様の力をお借りし、ビジネスとしてこの分野を成長分野として捉えていただき、具体的なソリューションを地域社会に提供いただく流れを作ることが重要」と述べた。

 昨年11月に設立された「交通空白解消官民連携プラットフォーム」には現在1200社以上が参加。全国1700自治体の半数近くが加わるなど、関心の高さがうかがえる。

「競争」による新たなまちづくりと交通

静岡市長 難波喬司氏

 

 基調講演では静岡市長の難波喬司氏が登壇。「共に創る」を意味する「共創」をテーマに静岡市の取り組みを紹介した。「社会全体の力と世界の知性が集まり、つながることで社会問題が解決される。市役所は社会がうまく働く仕組みを作り、社会課題をみんなの力で押し上げる下支えをする」と述べた。

 難波市長は行政運営の基本方針として「EEPI(エビデンス&エンパシーベースド・ポリシー・インプリメンテーション)」を提唱。「地域行政においては、エビデンス(証拠)だけでなく共感が必要。また、政策形成だけでなく政策執行が大事」と強調した。

 静岡市の交通政策については、「現在の交通事業者だけでは公共交通を維持するのは困難。交通事業者だけでなく市民、行政、地域の関係者が共同連携して公共交通の利便性・持続可能性を高める時代だ」と述べ、AIオンデマンドバスや公共ライドシェアなど新たな移動手段の導入を進めていることを紹介した。

 

交通空白解消に向けた国交省の取り組み

国土交通省総合政策局地域交通課長 福嶌教郷氏

 

 国土交通省総合政策局地域交通課長の福嶌教郷氏は、今年2月から4月にかけて実施した調査結果を報告。全国に少なくとも2000以上の交通空白エリアがあることが判明し、観光客向けの移動手段についても462地点で課題があるとの結果を示した。

 福嶌課長は「目の前の交通空白への対応」と「持続可能な体制づくり」の2つを柱に、官民連携プラットフォームを通じた多分野との連携を進めていると説明。「部活動送迎と地域交通の連携」「福祉施設送迎の共同化」などの先進事例を紹介した。

 また、「共同化・協業化」のキーワードを示し、「それぞれの地域で個別にシステムを構築するとコストがかかる。なるべくまとめ上げていくことでコスト効率的にできる持続可能な仕組みを考えるべき」と強調した。

 

異業種による共創の現状と課題

 

 パネルディスカッションでは、「地域共創で切り拓く未来のモビリティ社会〜異業種コラボレーションによる交通・観光DXの未来〜」をテーマに、第一交通産業の田中亮一郎社長、時事グローカルサービシーズの杉本一郎社長、常陽銀行の高橋真興主任調査役が登壇した。

 田中社長は北九州市での「北九州モデル」の取り組みを紹介。「路線バスを守っていく必要がある中で、バスとモノレールだけでなくタクシーも一緒にひっくるめてやっていかなければならない」と述べた。また自治体との連携に関しては「予算化に向けて市会議員や県会議員を集めて説明し、理解を得る取り組みを行っている」と説明した。

第一交通産業 田中亮一郎社長

 

 杉本社長は千葉県初の地域連携DMO(観光地域づくり法人)として千葉県外房地域の観光と交通を一体的に推進する取り組みを紹介。「自治体単独では観光を進めていくのは難しい。地域創生を進めるにあたって、小規模自治体が国の政策を活用できるよう手助けしたい」と述べた。

時事グローカルサービシーズの杉本一郎社長(=写真右から2人目)

 

 高橋氏は、茨城県笠間市での地域交通の課題解決に向けた取り組みを紹介。「地域交通の課題と地域活性化は表裏一体。交通の課題を解決すれば必然と地域活性化につながる」という視点から、「交通MaaS機能」の実装を目指していると説明した。

常陽銀行 高橋真興主任調査役

 

 デジタル技術の活用については、タクシー業界の共通アプリ整備や地方でのキャッシュレス対応の課題、働き方の多様化に対応した地域人材のマッチングプラットフォームの必要性などが議論された。

 Will Smartの石井社長は「標準化していってバラバラなものを共通化していくことで全体的にコストダウンが図れる。また、デジタルの活用でシェアリングエコノミーが進み、データ活用による改善が可能になる」とまとめた。

Will Smartの石井社長(=写真右端)がファシリテーターを務めた。

 
 
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