
山邊氏
観光は団体戦
観光産業は裾野が広いと言われる。確かに運輸、宿泊、代理店に代表される直接的な事業者に限らず、間接的にもその恩恵を授かる存在は多い。いわば観光の「当事者」だ。
一方で、それが地域住民にまで広がっているかというと疑問符が付く。むしろ当事者というよりも被害者として捉えられることが多いように感じる。オーバーツーリズムはその最たるものであろう。
地域住民にまで観光の当事者となってもらえる取り組みは考えられないだろうか。ここでは「お客さまの満足」を基点とする二つの循環モデルを考えたい。
お客さまは期待値をもって観光地広島を訪れる。満足すれば口コミを拡散し、それを聞いた人が、また新たな期待値をもって広島を訪れてくれる。すなわち新規のお客さまが増える。さらに満足したお客さまは広島のファンになり、リピートしてくれるだろう。これが一つ目の循環。お客さまが増える構造だ。
さらに、お客さまは満足すれば、「広島最高だった!」と褒めてくれる。その言葉が地域の住民に伝われば、うれしくなる。心が躍る。そして、今私が住んでいるここ広島は、素晴らしいところだったんだ、と自覚し、そこにシビックプライド(誇り)が生まれる。
誇りはわが街を思う気持ちを高め、住民参加型での街づくりが進み、さらに素晴らしい街になる。その街を訪れたお客さまは、さらに満足する。これが二つ目の循環。住民に誇りをもたらし、さらに街づくりへと発展する構造だ。ここまでいけば、地域住民も立派な「観光の当事者」だ。
しかしながら、実際にはここまで奇麗に循環するわけではない。停滞要因がそこかしこに存在する。
この停滞要因を取り除くためにどうするか。私たちは「仲間」が必要と考えた。広島に愛着を持ち、立場を超えて観光発展の「当事者」となってくれる、そんな仲間だ。できれば公式性を担保し、自他ともに認める状態であった方が良い。こうして生まれたのが、広島が好きであれば誰でもなることのできる制度、「HITひろしま観光大使」だ。
人は自身の立場を自覚することで振る舞いも変わる。当事者として観光が及ぼす直接的、間接的な出来事に無関心ではいられなくなる。停滞要因にともに向き合ってくれる。「観光大使」というタイトルが、その役割を果たしてくれるはずだ。現在世界中に3万人を超える人が登録してくれている。目指すは100万人だ。
数多くの観光の当事者が広島の観光に関わることで、観光地広島の魅力向上や街づくりに寄与してくれることを願う。そして、観光客の賞賛が、地域に誇りをもたらしてくれる未来を夢みている。広島は「観光は団体戦」で世界トップ10の観光地を目指す。
山邊氏