【脱炭素でスマートな旅館 国際観光施設協会エコ・小委員会 56】自然冷媒へ転換進む冷蔵庫の進化


 近年、業務用冷蔵庫業界では、従来のフロンガスから環境負荷の少ない自然冷媒への切り替えが急速に進んでいる。背景には、地球温暖化係数(GWP)の高いフロン類の使用を抑制する国内外の法規制の強化がある。特に日本では「フロン排出抑制法」により、定期点検や漏えい報告が義務付けられ、店舗や企業の負担増につながっていた。

 こうした中、自然冷媒を用いた冷蔵庫は、フロン規制の対象外であり、環境への配慮と長期的な安定運用が可能となる。ESG経営やSDGsへの関心が高まる中、自然冷媒の導入は企業イメージの向上にも寄与するものと期待される。その上消費電力量は2000年と比べて4分の1に削減され冷蔵庫の省エネ化が進んでいる。

 また、オープンキッチンなど厨房機器がお客さまの目に触れる機会が増えたことから、ドアハンドルのないフラットなデザインなど厨房空間の美観と使いやすさを両立した製品が増えている。

 このように冷蔵庫、冷凍庫は性能、機能、デザイン面で進化しているが、使い方には課題がある。メーカーの製造工程に当てはめると、冷蔵庫、冷凍庫は部品供給元で、調理時に食材を不足なく、タイムリーに供給することで、生産性を上げ、おいしい料理が提供できる。

 しかし、プレハブ冷蔵庫の中は段ボールに入った食材を床から積み上げ、竪型冷蔵庫は食材が突っ込み状態で整理されていない、台下冷蔵庫は使い勝手が悪いのか有効に利用されていないなどの問題が生じていることがある。そしてそのような施設ほど冷蔵庫が足りないとの声がよく聞かれる。

 冷蔵庫の中に棚を設けて、中身が見えるクリアケースに食材を入れると在庫も管理しやすく、出し入れもスムースになり、食材ロスも減る。そしてドアの開閉時間が短くなることで冷気が逃げない。検品検収時に食材を衛生的なクリアケースに移し段ボールは納入業者に持ちかえってもらうこと、ドアのパッキンの状態を点検し、フィルターを定期的に清掃するといった簡単なことでカイゼンにつながる。

 冷蔵庫、冷凍庫の置き場所を再検討し、調理人やサービススタッフの無駄な動きを省き、生産性を向上させたい。最近大手メーカーの生産方式の指導を受けているクライアントから、食材管理を見直し棚卸をしたら、冷蔵庫の数が減ったと自慢げに現場を案内された。

 この20年で旅館の調理が個人客向けに変化しているのに合わせて、進化した冷蔵庫冷凍庫を上手に利用して食材ロスを削減し、エネルギー利用を適正化し、人手不足に取り組みたい。

(国際観光施設協会 エコ・小委員会 佐々山建築設計 佐々山茂/フジマック 渡邉瑞郎)

 
 
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