
マジックテープで簡単に着用できるしろくま着物
正絹着物を5分で着付け
訪日客があふれる昨今、日本の観光地を訪れる旅行者に人気のアクティビティの一つが「着物体験」だ。着物姿で街歩きを楽しむ外国人旅行者の姿を目にすることも多い。だがわれわれ日本人から見ると、その質感や色合いなどに違和感を覚えることが多々あるのではないだろうか。着物体験施設の多くでは、比較的安価で、水や汚れに強く、簡単に洗えるポリエステル製の着物が主流だ。また着崩れが起きても、外国人では自分で直せないという問題点もある。
こうした現状に一石を投じるのがウェイバーズインターナショナル(大阪市、片山身和子代表)が手掛ける「しろくま着物」だ。しろくま着物は、正絹のアンティーク着物を巻きスカートと上着のセパレート式にリメイクした商品。着物独特の美しいシルエットや正絹着物の風合いや織り模様はそのままに、ワンタッチ式の帯を含めて5分程度で着られるのが一番の特長だ。外国人をはじめとする着付け未経験者が気軽に着られるつくりのため、着物体験アクティビティでの利用はもちろん、帰国後も伝統的な着物を着たい外国人のニーズにも合致する。
「観光用、土産用だから簡易品で十分」とされがちな分野で、正絹の価値を手軽に体験できる意義は大きい。すべての製品にはシリアル番号入りの真贋(しんがん)保証タグが付いており、品質と信頼性を担保。「本物の日本文化」を提供したい観光事業者にとっては管理や差別化が容易だ。
しろくま着物は「MOTTAINAI」精神を軸にしたサステナブルブランドでもある。年間50万トンが廃棄されているともいわれる着物を再利用することで、今では失われつつある染めや織りの伝統文化を未来に伝承。さらにリメイク工程の一部をB型支援施設に適正な報酬で委託することで、障がい者の雇用の安定と収入向上、やりがいにつながる仕組みも構築する。
機能面では着席したままでも着用できるため、車いす利用者や高齢者でも着用可能。着物も帯もさまざまなサイズに対応でき、サイズインクルーシブを実現している。
大阪・心斎橋に今年5月にオープンした、日本文化体験施設「道―Samurai Armor&Kimono Experience Osaka」でも、本物の甲冑(かっちゅう)着用体験や茶道、書道体験などとともにしろくま着物による着物体験プログラムを用意している。体験プログラムの限られた時間の中で、従来の簡易着物では得られない正絹の質感を楽しめることから、インバウンド客から好評を得ているという。
日本の本物の伝統文化を提供しつつも利便性が高く、さらにはエシカルなしろくま着物。観光文化体験の価値を高める新たな選択肢として今後注目を浴びそうだ。
マジックテープで簡単に着用できるしろくま着物