
大阪・関西万博に参加してきた。世間ではネガティブな要素も一定数いわれてきたが、展開されているパビリオンや全周2キロメートルに及ぶ世界最大規模の木造建築の大屋根リング等、個人的に非常に興味深い内容で、また早いタイミングで再訪したくなった。
今回のテーマである「いのち輝く未来社会のデザイン」については、一般的には抽象的で分かりづらい要素があると一部ではいわれてきた。しかし、実際に参加してみると各パビリオンで出展者ごとに、このテーマに対する捉え方をしっかりとプレゼンされており、体感を通じて考える機会を提供してくれる構成になっていて、知的好奇心をくすぐる仕掛けが多くあった。
注目されているのが、シグネチャーパビリオンである。日本を代表する落合陽一氏や小山薫堂氏ら8人のクリエイターが「いのち」の概念の捉え方を多方面から提示している。その一つである石黒浩氏の「いのちの未来」では、”未来との出会いが、人間の生き方をもっと自由にする。”というコンセプトで、そもそもわれわれがどうありたいのか、今を生きる私たち、そして未来の世代の幸せのために技術や倫理がどうあるべきかを問うているように感じた。50年後、千年後という未来から現代というものを考えさせられる非常に興味深い展示でもある。
また民間パビリオンにおいては、パソナや三菱、住友といった日本を代表する企業グループが、それぞれの立場から未来や健康、技術を紹介している。各国のパビリオンでは米仏等文化的に注目すべき点も多いが、日本館では生産・消費・分解を繰り返す循環としての日本人の美意識を紹介しており、サーキュラーエコノミーの在り方を考えさせられる展開となっている。
私自身、今回たった1日では回りきれず、あと2~3日かけてじっくり探求したいと考えている。昨今、科学技術の進歩は非常に目覚ましいものがある。その中で自身のいのちや健康、家族のつながりがどうあるべきか、世界の人や異文化との多様性やつながり、芸術的なものから得られるワクワク等々を含めて、未来社会、そして今をどう生きるのかを考えさせられる仕掛けが多数ある。
現在、私たちは課題だらけの時代に生きているが、その予測不可能性を含めて楽しめているのかもしれないとも感じられた。未来社会とはAI等に支配される恐ろしい姿ではなく、私たちがウェルネス・ウェルビーイングの追求のために一定のルールや協調の中で、テクノロジーそして地球環境との共存の最適解を見出すことができれば、きっとよい流れが導き出されるだろう。
今回の万博は、そうしたことを考える機会を提供してくれているように感じる。万博のレガシーとは、そうしたよりよい在り方を考えること、自分事化していくこと、そのような思考サイクルを多くの人が実装し、ともに作っていく流れが出来上がることかもしれない。そんな万博の成果を期待していきたい。
(地域ブランディング研究所代表取締役)