
静岡県伊東市の田久保真紀市長の学歴を巡る疑惑は収まる兆しがない。伊東のイメージダウンばかりか、市経済にまで影響を及ぼし、観光振興の面でもマイナスとなっているようだ。
事態の深刻化を受け、伊東商工会議所(加盟1630団体)、伊東観光協会(同80団体)、伊東温泉旅館ホテル協同組合(同63事業所)の経済3団体のトップが20日、市長と面会し、市政の早期正常化を求める要望書を手渡した。
やや長文だが、要望書の全文を紹介したい。団体の危機感がよく表れている。
「田久保真紀市長の学歴詐称疑惑に端を発し、その後の一連の言動により、市議会では『市長に対する辞職勧告決議』や『百条委員会設置に係る決議』が全会一致で可決され、市職員は8月18日までに電話やメールにより6800件を超える苦情対応を余儀なくされているほか、市内経済対策に係る市補正予算措置が何ら講じられない等、伊東市政は混乱し、市内経済は停滞していると断じざるを得ません」
「このような異常事態は、決して許されるものではなく、我々は一刻も早く市政の正常化を強く望むものです」
「ついては市政の早期正常化のために、早急に自ら市長職を辞し、民意を問うことを決断されるよう要望します」
これに対し、田久保市長は「ご要望の方は真摯(しんし)に承りましたので、配慮させていただきたい」と述べるにとどめた。
その後も辞職する気配はなく、田久保劇場はいまだ続いている。これだけ批判されながらも続けるタフさに、ある意味感心する。
テレビの取材に対し、トップは「伊東って変なところだよねとは思われたくない」(斎藤稔・商工会議所会頭)、「これがプラスになることは一切ない」(稲葉明久・観光協会会長)、「懸念はイメージダウンで、宿泊予約すらされないこと」(北村太一・旅館ホテル協組理事長)と語っている。
観光振興は地域活性に欠かせないとして、市政の重点施策に掲げる自治体も少なくない。観光で訪れることでいいイメージを抱けば、移住・定住にもつながる。
鍵を握るのはそこに住む人々、観光関連事業者の協力はもちろん、何より自治体のトップ(首長)の観光に対する理解、思い入れ、強いリーダーシップである。そのトップが不祥事で、観光振興の足を引っ張っているとすれば残念でならない。
伊東の混乱が早く収まり、正常な姿に戻ることを願ってやまない。辞職は避けられないだろう。
外国人も参加するタライ乗り競争。伊東の観光魅力の一つだ