
福井県観光連盟の荒木敬司・観光ネットワーク推進事業部長
北陸新幹線金沢―敦賀開業 関東からも誘致強化へ
教育旅行誘致について、福井県観光連盟・観光ネットワーク推進事業部部長の荒木敬司氏に聞いた。
――福井県の観光政策における教育旅行の位置づけは。
北陸新幹線の金沢・敦賀開業は大きな追い風だが、以前から教育旅行誘致には力を入れてきた。福井県の魅力に触れて学んでいただきたいというのはもちろんだが、子ども時代の旅行体験は将来の旅行意向に影響するといわれ、教育旅行の経験が将来の福井県観光にもつながると考えている。平日の旅行需要という意義も大きい。教育旅行は非常に重要なカテゴリー、ターゲットと捉えている。
――近年の教育旅行の来訪実績は。
福井県はどちらかというと、これまで教育旅行のメインデスティネーションではなかったこともあり、コロナ禍の3年間は、旅行先の振り替え需要でむしろ以前より多くの教育旅行生にお越しいただいた。コロナ前は年間2千人泊ぐらいだったが、コロナ期間には1万5千人泊に達した年があった。これは小さくないインパクト。コロナが明けると、元々の行き先に教育旅行が戻る流れがあり、ピーク時からは減少したものの、2023年度は約5千人泊でコロナ前を大きく超えた。北陸新幹線の開業効果も生かし、さらなる誘致に取り組んでいきたい。
――福井県を訪れる教育旅行の傾向は。
これまでは関西発、中京発の中学生の教育旅行が多かった。中学3年生の修学旅行というよりも、中学2年生の自然体験学習や課外活動などが多かったが、最近は大阪府などからの修学旅行も増えてきた。関西発、中京発に加え、今後は北陸新幹線を生かし、関東発の教育旅行を誘致したい。2026年度のJRの連合体輸送計画の発表以降、関東圏からの問い合わせが増えており、今後は増加が期待される。
――福井県で実施する教育旅行の魅力や特色は。
福井県には大規模なテーマパークなどはないが、「幸福度日本一」という独自の強みがある。この「幸福度日本一」の背景を、農山漁村での民泊、さまざまな学習プログラムを通じて実感してもらいたい。2泊3日の旅程であれば、1泊は旅館・ホテル、1泊は民泊・民宿というモデルコースを提案している。一般家庭でのホームステイを通じ、家族の一員として福井県の生活や産業を体験してほしい。
――民泊以外に、特徴的な学習プログラムは。
県内各地に自然、歴史・文化、産業、食などをテーマにした多様な体験プログラムがある。その中でも伝統産業は、福井県らしいテーマ。県内には越前和紙や越前漆器、越前焼などの伝統産業が集積しているエリアがあり、ものづくりの技や精神に触れられる体験プログラムがある。伝統産業の担い手不足に悩む産地が多い中、県内の産地は若い世代の職人や芸術系大学の卒業生が移住してくるなど活気が出てきている。一般消費者と交流するオープンファクトリーやイベントも行われている。ものづくりの体験にとどまらず、産業振興や地域活性化に関する学習にもつながる。
もちろん福井県の定番観光スポット、東尋坊、永平寺、県立恐竜博物館にも教育旅行生が多く訪れている。その中で近年注目されているのが、2020年11月にリニューアルオープンした平和学習施設「人道の港 敦賀ムゼウム」。敦賀港はロシア革命を逃れて日本に来たポーランド孤児や、杉原千畝氏の「命のビザ」で日本に逃れてきたユダヤ難民を受け入れた歴史がある。敦賀ムゼウムにはシアターやアニメーションを活用した展示があり、「北陸唯一の平和学習施設」として教育旅行に提案している。
――教育旅行の誘致に向けて、学校、旅行会社の担当者にPRしたいことは。
「幸福度日本一」の理由を探しに福井県にお越しいただきたい。その理由を知るための探究学習の素材がたくさんそろっている。物価高騰やオーバーツーリズムなどの現状を踏まえると、福井県での教育旅行には、手配や費用の面で多くのメリットがある。当連盟を中心に県全体をサポートする態勢も整っているので、福井県での教育旅行をぜひご検討いただきたい。
福井県観光連盟の荒木敬司・観光ネットワーク推進事業部長