【駅メロとわずがたり44】明菜さん”完全復活” 故郷への感謝を込めた清瀬駅のメロディ 藤澤志穂子


中森明菜さんのパネル

 東京都清瀬市出身の歌手・中森明菜さんが2025年4月、大分県で行われた野外ロックフェスティバルで、16年ぶりに公の場でステージに立った。その1曲目が「Desire―情熱―」(1986年、作詞・阿木燿子、作曲・鈴木キサブロー)だった。

 明菜さんの故郷である清瀬市の、西武鉄道清瀬駅の発車メロディでもある。駅開業100周年を記念して2024年6月11日から採用。東京方面行きの上りホームで、朝に利用する通勤・通学客を元気に送り出すイメージで選曲された。もう一つは「セカンド・ラブ」(1983年、作詞・来生えつこ、作曲・来生たかお)で、下りホームで夜、疲れて帰って来た人を癒やすイメージでの選曲だった。いずれも清瀬市が企画、選曲には明菜さんも関わっている。2曲とも明菜さんの思い入れが強い曲だ。

 「Desire」は発表当時、本人のアイデアによる着物風の衣装とボブスタイルのウィッグが強い印象を残した。「セカンド・ラブ」については「(最初に聴いた時、メロディの美しさに)感動で体じゅうに閃光(せんこう)が走ったような気がした」というほど大切に歌ってきた。当時のスタッフは「プロフェッショナルで、最大限のパフォーマンスを見せようとする努力の人」と評しており、何事も全力投球で当たる姿勢が伺える。

 駅メロ開始にあわせて4種類の明菜さんの近影がパネルとなり、本人直筆のメッセージともに公開された=写真。メッセージつきの近影は非売品のポストカードにもなり、4種類、各千枚、計4千枚が制作され、メロディ開始から1カ月ほど後の、2024年7月13日の明菜さんの誕生日の前後4日間で、清瀬市郷土博物館で無料配布された。博物館では清瀬駅100年の企画展を開催中だった。当時ちょうど都内でファンクラブ会員限定のライブが開催され、「ファンの方に清瀬市にも来てほしい」との思いがあったという。その結果、国内はもとより海外からもファンが訪れカードは人気沸騰、いまやネットオークション等で高値で取引されている。市は「明菜さんや事務所のご厚意で実現したもの。買わないでほしい」と呼び掛けている。パネルはいま、駅の南口、北口(=写真)にあり、多くのファンが訪れている。


中森明菜さんのパネル
 
 清瀬市には雑木林や農地が残る武蔵野の原風景が今も広がっている。空気の良さから、昭和初期以降、結核の治療施設など複数の医療機関が設置され「東洋一のサナトリウム」と呼ばれてもいた。そんな歴史を持ちながら、駅前には下町の風情も残る街並みが広がる。駅メロには明菜さんが人生を重ね、改めて自分を育んだ街への感謝を示したい、といった気持ちが込められているのではないだろうか。清瀬市は今後も明菜さん側との連携を模索しており、新しい試みを期待できそうだ。

 【出典】西武鉄道の世界(交通新聞社、2025)
 ※元産経新聞経済部記者、メディア・コンサルタント、大学研究員。「乗り鉄」から鉄道研究家への道を目指している。著書に「釣りキチ三平の夢 矢口高雄外伝」(世界文化社)、「駅メロものがたり」(交通新聞社新書)など。
     

 
 
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