
海運交通の要衝として発展を遂げてきた尾道市。駅前の桟橋近くに、海運倉庫を改修した商業施設「ONOMICHI U2」がある。伝統的な繊維産業といった文化の継承や雇用創出など、地域活性化の拠点とするべく2012年に広島県が始めた「県営上屋2号倉庫」の再生事業で誕生。現在はせとうちクルーズが運営を手掛けている。
ONOMICHI U2のテーマは、「まちの中のちいさなまち」。施設全体を一つの街に見立て、倉庫内にレストランやバー、ライフスタイルショップなどを併設。豊富な瀬戸内の食材や特産物を使い、地域での豊かな暮らしや過ごし方を提案する。
中でも注目したいのは、自転車を持ち込んで宿泊できる「HOTEL CYCLE」だ。しまなみ海道を目指すサイクリストの拠点として人気を集め、ベストシーズンの春・秋は特ににぎわう。宿泊者限定に自転車の貸し出しも行っており、一般の宿泊客もサイクリングを気軽に楽しめる。
支配人の井上恵理子さんによると、国内の主な客層は関東・関西在住者が多く、近年はインバウンドも増加傾向という。「インバウンドが宿泊者の半数以上を占める月もあります。欧米豪を中心に、台湾やシンガポールからお越しのお客さまも見られます」と井上さん。
多様化する宿泊客に合わせた対応も強化。自社ホームページからの予約時には性別選択をなくして人数確認のみにしたほか、QRコードを読み取ることでホテル側と多言語でチャットできるツールを客室に導入するなど、十分な配慮を行っている。サイクルスポットを巡るクルーズ船も尾道に寄港するようになり、グローバルに観光客を迎え入れるおもてなしの強化に努めている。
施設は今年で開業11周年。国内向けには、注目を集めやすいイベントを積極的に誘致するなど、全国からの集客にも取り組んでいる。井上さんは、「古き良きものを次世代につなげていきながら、地域観光の活性化を担っていきたいです」と意気込みを語った。
【28室、1泊2食付き1人税込み1万9千円から(2人1室)】
「スタンダードツイン」客室の内装。マイ自転車を持ち込めるのが特長だ