
7月8日から、ANAやJALをはじめ、国内航空会社におけるモバイルバッテリーの機内持ち込みルールが変更された。
これは7月1日に国土交通省航空局が定期航空協会と連携し、国内航空会社(本邦定期航空運送事業者)の統一的な取り組みとして、7月8日よりモバイルバッテリーは収納棚に入れず、常に確認できる場所に保管することで統一された。法的拘束力はないが、協力要請という形でお客さまへの周知を進めることになる。
以前より預け手荷物の中にモバイルバッテリーを入れることは禁止されていたが、今回の変更では、座席上の収納棚に機内持ち込み手荷物と一緒に収納することが禁止され、足元もしくはシートポケットなど自分の手元に置くこととなったほか、モバイルバッテリーからの充電や機内電源からモバイルバッテリーへの充電についても常に状態が確認できる場所で行うことになった。
このような背景には、海外ではモバイルバッテリーからの発煙・発火が相次いでおり、日本でも統一基準での取り組みがスタートすることになった。
特に今年1月28日に韓国・釜山の金海国際空港でのエアプサン機内での火災では、乗客が機内の収納棚に入れたモバイルバッテリーがショートして発火したことで、各国政府が対策に乗り出すきっかけになった。海外の航空会社では日本よりも早く、モバイルバッテリー機内持ち込みルールを強化した。
各国当局によってもルールが異なり、シンガポール航空では、機内でモバイルバッテリーの使用を全面禁止し、充電済みのモバイルバッテリーからスマートフォンなどへの充電も禁止されている。台湾の航空会社でも同様の措置が講じられているが、日本の航空会社では充電自体は可能だ。
モバイルバッテリーの中には粗悪品もあり、温度が上昇して爆発してしまったことで火災になったケースもあるなど、信頼のあるモバイルバッテリー(過度に安い製品は注意)を利用するのが望ましいだろう。
もし発火した場合の取り組みとして、例えばANAでは、モバイルバッテリーが万が一発火や破裂した時に、乗客や乗務員、航空機を守るための「Fire Resistant Bag」を共同開発し、昨年よりANAの機材に搭載している。消火効果のあるエアロゾルを放出する消火フィルムと耐火袋を組み合わせ、異常発熱や変形などの兆候が現れた電子機器に、迅速かつ安全に対処できる設計となっており、延焼を防げるとのことだ。
これから飛行機を乗る際にモバイルバッテリーのルールを事前に確認しておくことをおすすめしたい。
(航空・旅行アナリスト、帝京大学非常勤講師)