橋下・溝畑氏が語るIRの可能性 「大阪の観光、万博から基盤築く」


溝畑氏(左)と橋下氏

 インバウンドコンサルティングのmovは8月5日、インバウンドカンファレンス「THE INBOUND DAY 2025-まだ見ぬポテンシャルへ-」を東京都内で開催した。元大阪府知事・元大阪市長の橋下徹氏が基調講演を行った後、大阪観光局理事長の溝畑宏氏が登壇し、両氏によるトークセッションが行われた。モデレーターはmov専務取締役COOの菊池惟親氏が務めた。

「大阪をアジアナンバー1国際観光都市に」

 溝畑氏は大阪府知事時代の橋下氏との出会いが人生を変えたと振り返った。

 「私はずっとJリーグで社長をやっていた。2008年、ゼロから大分トリニータがJリーグで優勝した。その次の年に橋下さんがインバウンド強化の緊急会議を大阪で開き、講師として呼ばれた。橋下さんの『大阪から日本を変えるんや』『インバウンドはこれから成長や』という言葉が私の心を揺さぶった」と語った。

 その後、溝畑氏はJリーグの社長を辞め、観光庁長官に就任。「橋下さんが大阪で旗を振ってくれたから、政府で頑張っていても孤立感があったが、魂が共有できた」と述懐した。

 橋下氏と溝畑氏が共通して持っていたのは「大阪をアジアナンバー1国際観光都市にする」という強い意識だ。大阪の観光戦略について溝畑氏は「橋下さんと松井さん(前大阪市長)と協力し、いち早くWi-Fi、多言語表示など良質な観光環境を整え、空港を強化した。人・物・資金・情報を集めるための装置を交通政策、都市政策、経済政策、文化すべてを統合しながら進めてきた」と説明した。

溝畑氏(左)と橋下氏

 

IR誘致は16年越しの取り組み

左から菊池、溝畑、橋下の各氏

 

 セッションでは特に統合型リゾート(IR)について多くの時間が割かれた。橋下氏によると、IR誘致への取り組みは2009年から始まっていた。

 「IR、いわゆるカジノを含む統合型リゾートについて、2009年の段階で『国際エンターテイメント都市』というコンセプトを打ち出した。賭博罪になるため誰も言わなかったが、カジノを基軸とした非日常空間の創出で大量の人・金を集めてくると考えていた」と橋下氏は説明した。

 IR誘致に対しては「PTAや青少年育成団体から『カジノが来たら大阪の子供たちが不良になる』と批判を受けた」という。しかし橋下氏らは粘り強く取り組みを進め、2018年にIR実施法が成立。大阪は2030年の開業を目指している。

 橋下氏は「売上は6000億から7000億円、1兆円を目指す。1000億円を大阪府・大阪市が得て、医療・教育・福祉に回す」と説明。「皆さんインバウンドに携わる事業者はその果実をどう取っていくのか、またそこをどう膨らませていくのか、一致団結して2030年、日本で初めて開かれるIRの莫大な経済効果を収穫していただきたい」と呼びかけた。

 

インバウンドを地方へ波及させる好機

 溝畑氏は「大阪のIRは起爆剤。大阪の都市魅力、成長戦略を加速させていく」と強調。また「大阪だけがインバウンドを抱え込むのは限界。地方の皆さんもインバウンドに参画し、6000万人の訪日外国人を迎える時代に地方へ分散させる必要がある」と述べた。

 大阪のハブ機能について溝畑氏は「フランクフルト、ミラノのように大阪自体が中継都市となって日本各地を分散していく役割を担う」と説明した。

 橋下氏も「地域には魅力がたくさんある。日本のGDPは600兆円だが観光のGDPは42兆円。欧米なら10〜15%だから60兆、70兆円いける。あと30兆円は集められるはず」と指摘。「魅力をリサーチし、それを磨いてマーケットを開発し、発信していくエコシステムができれば、インバウンド消費額は15兆、20兆円になる」と展望を語った。

 最後に両氏は観光産業の将来性について言及。溝畑氏は「将来、観光業界で大谷翔平のように100億円を稼ぐ人が出てくるような業界にしたい」と期待を示し、橋下氏も「創造的な価値を提供する超イノベーティブな産業だ。確実に伸びしろが見える産業に携わらない手はない」と締めくくった。

【kankokeizai.com 編集長 江口英一】

 
 
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