
猛暑で外出がためらわれ、暇にまかせて自宅の洗面所の片付けをした。収納スペースにホテルや旅館でもらってきた歯ブラシ、小さな歯磨き、ひげそり、シャワーキャップなどが山のように出てきた。デパートの紙袋いっぱいになるほどだった。筆者夫婦はともに地方での仕事が多いから、2人して持ち帰った品々だ。
さて、これらのアメニティーグッズをどうするか。今度旅行に行く時に持っていって使うことにしようか。しかし、旅館などにはグッズがあるしなぁとも思った。もちろん捨てるわけにはいかない。
なぜ、こんな思いをするかというと、短大でエコツーリズムの講座を担当しており、そこで旅先での環境問題について話す機会があった。授業を通じて、改めて自分自身の環境保護を学生とともに考えてみた。以前にも書いたが、宿泊施設で食事や風呂に行くとき、客室のエアコンを切るか、そのまま出かけるかなどを学生たちと議論した。
最初にこの問いを投げかけた時は、旅行に行ってまで省エネに気を使いたくない。エアコンはつけたままにするとの意見が多かったが、何回かの授業を経て、小まめにスイッチを切るという回答に次第に変わっていった。
省エネに限らず、資源の無駄遣いを減らしたいと思う。旅館の大浴場の脱衣場のゴミ箱には、1回使っただけのカミソリや歯磨きチューブが捨ててあるのを目にする。ケチな性分なのか、もったいないと心が痛む。
7月末に韓国旅行をした。昨年ソウルを訪れた際にホテルの客室にアメニティーグッズがなかったことを思い出したので、今回は自宅から持っていった。中級ホテルに宿泊したが、シャンプーやボディソープは供えられていたが、それ以外のモノはなかった。
数年前に泊まったカナダ東部のモントリオールのホテルでもアメニティーグッズは少なかった。そのことを知らなかったし、ホテル周辺にコンビニのような店もなかったので困った。案内役のカナダ人に聞いたら、資源保護のため部屋には常備していないが、フロントに頼めばもらえるとのことで助かった。
旅は非日常的な体験をする場であり、ささやかなぜいたくを味わうこともできる。そんな旅先で、エアコンのスイッチを小まめに切れ、設定温度にも気を使え、料理は食べ残すなと言ったら興ざめかもしれない。自宅では心掛けていることが旅先ではないがしろになることは否めない。
あるホテルの担当者は「お客さまには節電や節水など省エネなどを呼び掛けています。ただ、強調しすぎると苦情をいただくこともあります。対応が難しいです」と明かした。旅館や高速道路のサービスエリアの駐車場で、停車中にもかかわらず、クルマのエアコンをつけたままにした人も見かける。これも注意できないと、女将は困った表情で話した。
今年の夏も猛暑だ。7月の平均気温が統計開始以来最も高くなった。地球温暖化か、いや地球沸騰化が原因なのか。筆者には専門的なことは分からない。ただ、ささやかな抵抗として、身の回りでできる環境保護、省エネなどは心掛けていきたい。旅には歯ブラシ、歯磨き、ひげそりなどを持参しよう。
(日本旅行作家協会常任理事、元旅行読売出版社社長)