
基調講演で橋下徹氏が登壇
インバウンドコンサルティングのmovは8月5日、インバウンドカンファレンス「THE INBOUND DAY 2025-まだ見ぬポテンシャルへ‐」を東京都内で開いた。元大阪府知事・元大阪市長の橋下徹氏が「インバウンドで日本を元気に!橋下徹が提言する、日本の未来」と題して基調講演を行った。 橋下氏は訪日外国人観光客受け入れを拡大する重要性と同時に、ルール整備の必要性を強調した。
「輸出産業として自動車産業に次ぐ規模に」
「インバウンドということが一つの産業になって、これだけ多くの皆さんが関心を持ってイベントに集まられるということを2008年、大阪府知事に就任したときには想像できませんでした」と橋下氏は講演の冒頭で述べた.。現在のインバウンド産業について「輸出産業としては自動車産業についで2番目の金額になっている」と位置づけた。
橋下氏によれば、インバウンドは自動車産業と異なり「これからまだどんどん伸びていく」産業。「外国から来た観光客の皆さんはお金を使う目的で来ているわけですから、このインバウンドの領域に踏み出す人たちは必ず儲かる」と強調した。
訪日外国人観光客数は2023年に3,188万人、2024年には4,000万人を超える見込みで、消費額は2024年に8兆円、2025年には10兆円を超えると予測されている。橋下氏は「6,000万人で15兆円になり、完全に自動車産業を抜かしていく勢いになるのではないか」と展望を示した。
大阪のインバウンド戦略「中継都市」への転換
橋下氏は2008年に大阪府知事に就任した際、「中継都市」という方向性を打ち出したと振り返った。それまでの自治体政策は「人口を増やす」「企業を誘致する」といった「増やせる政策」が中心だったという。
しかし日本の人口動態を見れば、今の1億2,000万人という人口は「異常値」であり、「下がるに決まっている」と橋下氏は指摘。その上で 「女性が一生涯に産む子どもの数は今1.15です. お父さんお母さんから2人の子供が生まれてやっと世代交代し人口維持できるのに、1.15の子供しか生まれないから世代交代すると半分になってしまう」と述べた。
そこで打ち出したのが「中継都市」という考え方だ。「大阪というものに世界各地から人に来てもらって、そこから日本各地に行ってもらう.。日本から大阪に来てもらって大阪を通過して世界へ行ってもらう」という戦略を掲げた。
黒門市場を例に挙げ、「これから日本中の客を呼んでくるのは無理だから、外国人観光客を呼んでくるから、それに対応しっかりやってね」と2009年に伝えたという。現在では「巨大なレストランと見立てた外国人観光客が押し寄せて、連日賑わっている」と紹介した。
安心感と魅力の両立を
橋下氏は講演の中で、インバウンド拡大と同時に顕在化してきた課題についても言及。「最近は外国人に対して風当たりが強い。参議院選挙でも外国人に対して厳しい姿勢をとる政党が票を集めていました」と指摘した。
「外国人観光客をどんどん呼んで、商売繁盛していったらいいじゃないか」と言いつつも、例えば駅のホームで外国人観光客が弁当を広げて食べているのを見ると日本人は不安に感じるという。
橋下氏は大阪府知事・大阪市長時代に民泊の拡大を推進し、大阪は特区民泊の第1号になった。 しかし「今、特区民泊問題がテレビで連日取り上げられている」と課題も認めた。「参議院選挙のときには政党の人たちが『大阪は特区民泊になって今大変でしょう、外国人が大変でしょう、あれは全部橋下のせいだ』と言っていた」と振り返った。
その上で「まずやってみて問題があればそれを是正するというようなことをやってきた」と説明。「インバウンドに関しては新しい領域ではありますので、いろいろな課題なんかもわからないけど、まずやってみて必要があればそれに対処するという認識を共有することが非常に重要」と強調した。
「外国人は受け入れざるを得ない」としつつも、「無制限にやっていくといろんな国民の不安とかが増長していってしまう」ため、「受け入れと同時にルールの整備をしなければいけない」と訴えた。
インバウンドに携わる事業者に対しては「国を挙げて外国人に対して日本のマナーを知ってもらう」役割を果たすべきだと提言。「外国人との接点のところで日本のマナー・ルールというものを伝えていくというところ、これもみんなで協力してやっていかなければいけない」と述べた。
「魅力を外国人に提供して、そして国内の日本人や住民の皆さんには安心感をしっかり持ってもらう。このワンセットでインバウンドビジネスというものをもっともっと伸ばしていっていただきたい」と締めくくった。
【Kankokeizai.com 編集長 江口英一】