
安藤氏
美しい自然・歴史・文化を体感
この20年ほどで、日本でも「ロングトレイル」が認知されるようになってきました。もともとは欧米発祥で、直訳すると「長い道」。当協会では「『歩く旅』を楽しむために造られた道」としていますが、自然に親しむアクティビティとして近年注目されています。
日本では登山がメジャーですが、こちらは登頂を目的としたもの。ただ実際の行為をみると、意図しているかは別として、(未踏のルートを目指すアルピニストなどを除き)実は登山とロングトレイルは親和性が高いのです。日本では人と自然が近く、また山岳信仰の影響もあって山頂に向かう道が多いので、登山道はトレイルになっています。大切なのは、目的ではなく過程を楽しむこと。単に山頂を目指すだけでなく、歩く中で景色の変化を味わったり、花や森を愛でたり、地域の歴史文化に触れたりするなら、立派なトレイル歩きと言えます(誤解されている方がいるかもしれませんが、トレイルでは、山頂を通ること自体は問題ありません)。
もちろん、山道だけでなく、海岸沿いの道や歴史的な街道・古道などもトレイルになります。自分のペースで歩くことで、バスや電車では気付かないような地域の素顔に触れることができ、また歩かないとたどり着けないような奥深いところに行けるのも、何よりの魅力でしょう。
ただ、ロングトレイルという言葉のイメージから、中には「長く歩くもの、歩かないといけないもの」と感じ、過酷なイメージを持つ方がいるかもしれません。欧米では数千キロ、日本でも数百キロのトレイルがあり、「長大なコースをひたすら歩き続ける、求道的な徒歩旅行者」と言う人もいます。でも、実際にはトレイルの全てを歩かなければいけないわけではないですし、何度かに分けて歩く方法もあります。それぞれの経験や体力、時間、趣向などに応じて、柔軟に歩いていただければ結構です。
欧米では、登山はクライマーでないと技術的に難しいので、トレイル歩きがポピュラーです。活況を呈しているインバウンドでも、日本のロングトレイルを歩きたいという声が日に日に高まっています。われわれが提唱している、日本列島を縦断する「JAPAN TRAIL」(沖縄から北海道まで、およそ1万キロ)も、こうしたコンセプトのもとに検討を進めているところです。国内外を問わず、ぜひ多くの方に日本のロングトレイルを歩いていただき、日本が誇る美しい自然・歴史・文化を体感いただきたいと思っています。
安藤氏