
じゃらんリサーチセンターが2025年7月に発表した「国内宿泊旅行調査2025」によれば、2024年度の国内宿泊旅行実施率は49.3%と前年度比でわずかに減少した。一方、旅行単価は平均6万4100円と3500円増加し、総市場規模は約8.1兆円に拡大している。
旅行の同行者別構成では、「夫婦2人での旅行」が25.6%で最多。次いで「ひとり旅」が18.0%と続き、個人旅行の存在感が増している。特に50代男性や若年女性において、ひとりで自由に過ごしたいという傾向が強まっており、旅の価値が「同行者との時間」から「自分との対話」へと変化していることがうかがえる。
他方、この1年間に旅行をしなかった人の理由として、「家計の制約で旅行にお金がかけられなかった」が22.0%、「将来が心配で支出を抑えたかった」が8.9%と、いずれも前年度より微増している。こうした経済的不安の広がりは、旅行の意思決定を左右する重要な要素となっている。
このような状況下で宿泊施設が取るべきWEB集客の施策は、まず価格に見合う納得感の創出である。単なる値引きではなく、「体験価値付き」「ひとり旅歓迎」「地域との交流」といった付加価値の訴求により、この価格なら納得と感じさせることが重要である。
たとえば、ひとり旅専用の宿泊プランを造成し、「ひとり歓迎」「誰にも気兼ねしない食事」「自由に過ごせるラウンジ利用」などを明記する。さらに、地元の飲食店や文化体験と連携し、ひとりでも参加しやすい体験型コンテンツを提供することで、泊まる理由そのものを強化できる。
また、旅行検討層の多くが「なんとなく行かなかった」「特にきっかけがなかった」と答えていることから、WEB上での継続的な接触も欠かせない。メルマガやSNSでの定期的な情報発信は、旅行を先送りにしている層にとってその気にさせるトリガーとなる。
市場は「数」ではなく「質」へと移行している。宿泊業に求められるのは、経済状況への配慮と旅の価値設計を両立させるWEB戦略である。ひとり旅という新たな主流と、旅行を迷う人々の背中を押す仕掛けの両輪が今後の鍵を握る。
(株式会社プライムコンセプト 小林義道)