【VOICE】レジリエントなコミュニティづくり キタ・マネジメント建築文化研究所所長、サステナビリティコーディネーター ディエゴ・コサ・フェルナンデス氏


フェルナンデス氏

観光が地域活性化のツールになるために

 2018年から、愛媛県大洲市は城下町エリアにある歴史的建造物の老朽化と空き家化に対処するため、産官金が連携した再生プロジェクトを始動しました。この取り組みは、改修された町家を宿泊施設やテナントとして活用し、町全体を周遊できることを目的としています。これらの取り組みはオランダの認証機関「グリーン・デスティネーションズ」から国際的な評価を受け、大洲市は22年から3年連続で持続可能な観光地として認定され、24年には同認証機関の基準に基づきシルバー賞を受賞しました。  

 この経験を踏まえ、この場を借りて、観光業界における持続可能な取り組みについてお伝えしたいと思います。観光を持続可能な形にしていくためには、地域のレジリエンスを強化する必要があります。その核心的な要素は、既存のコミュニティに補完的な機会を提供することであり、訪問者と地域住民が共存する形を目指すものであります。

 まちにおいては、日常の生活リズムや既存の、町並みの景観や人間模様がサービスの核心を成すべきだと思います。最終的な目標は、訪問者が一時的な滞在者であるにもかかわらず、地元のコミュニティと絆を築き、そのコミュニティを深く理解することです。一時的であっても、そのコミュニティの一員となることが重要だと思います。 

 この目標を達成するためには、地域関係者が策定し、地域行政が推進する包括的な長期計画を実施する必要があると考えられています。この計画は、以下の三つの基本原則を基盤とするべきです。(1)環境への影響の最小化(理想的には、訪問者の貢献がポジティブな効果を生むべきです)(2)地域社会の福祉の向上(3)経済的均衡(観光への依存は持続可能性を脅かす可能性があります)。

 このような戦略を策定する際には、住民の声を反映し、参加の機会を提供するよう、大きな努力が求められます。持続可能な指標の設定と継続的なモニタリングは、このような計画の実施状況を評価し、その進捗(しんちょく)におけるバランスを確立するための基本的なツールとなります。

 これらの指標を取り入れることで、地域がどの段階まで対応できていて、次に何を目指すべきなのかが明確になります。地域住民の理解を得た上でまちづくり活動に積極的に参加していただき、まち全体として参画していくことがまちとしての「あるべき姿」であれば、世界的に近年ありがちなアンバランスな観光開発と異なる、持続可能な観光と言えると考えています。


フェルナンデス氏

 
 
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