世界最大級のデジタルトラベルプラットフォーマーであるブッキング・ドットコムは8月1日、「AIに関するグローバル意識調査レポート」を発表した。このレポートは、世界33の国と地域の37,000人以上の消費者を対象に、日常生活や旅行におけるAIの活用状況や信頼度、意識について調査したものである。同社は10年以上にわたりAIを自社サービスに取り入れてきた経験を活かし、進化する消費者ニーズに応えながら、旅行テクノロジーの未来を形づくることを目指している。
AIへの期待と懸念が共存する消費者意識
調査によると、世界全体の91%(日本も91%)の回答者がAIに期待を寄せており、79%(日本は60%)がAIの仕組みに精通していると回答している。しかし同時に、91%(日本は93%)が少なくとも1つ以上の懸念を抱いていることも明らかになった。AIを完全に信頼していると答えたのはわずか6%(日本は1%)にとどまり、AIが独自に意思決定を行うことに抵抗がないと答えたのも12%(日本は3%)という結果となった。
このような意識の分布から、回答者は「AI愛好家」(36%、日本は22%)、「AI支持者」(13%、日本は4%)、「AI慎重派」(13%、日本は14%)、「AI懐疑派」(9%、日本は11%)、「AI反対派」(25%、日本は27%)の5つのグループに分類された。多くの人がAIによる生活の利便性向上や時間・労力の節約を期待する一方で、一定数の人々がAI導入に抵抗を示していることが浮き彫りとなった。
地域ごとに異なるAIへの姿勢
AIに対する意識や態度には、地域ごとに大きな違いが見られた。ラテンアメリカでは98%がAIに期待を寄せ、89%がその仕組みを理解していると回答し、世界で最もAIへの関心と理解度が高い地域となっている。アジア太平洋地域も比較的AI活用に前向きで、特に教育や交通分野での活用が進んでいる。
一方、日本では91%がAIの可能性に期待を寄せているものの、理解度は60%とアジア太平洋地域全体と比べて20ポイント以上低く、教育分野でのAI活用も10%と世界平均(41%)を大きく下回る結果となった。また、北米や欧州・中東地域ではAIに対して懐疑的な傾向が強く、AIによって生成された情報を「ほとんど、あるいは全く信頼していない」と回答した割合が北米で32%、欧州・中東で29%と高い数値を示している。
AIは判断を”支援”するツールとして期待
調査からは、AIがすでに日常生活に深く浸透していることも明らかになった。回答者の98%(日本は97%)がAIを活用した検索を利用し、86%(日本は52%)がストリーミングサービスのおすすめ機能を使用している。一方で、多くの人がAIの出力内容を確認する傾向にあり、42%(日本は64%)が常に事実確認を行うと回答している。
こうした結果から、多くの消費者はAIに意思決定を一任するまでには至っておらず、「判断を支援・補完するツール」としての活用を望んでいることがわかる。
旅行分野でのAI活用が拡大
AIは旅行体験における中核的な存在になりつつあり、消費者の65%(日本は62%)が「近い将来、自動で旅行を計画する時代が当たり前になる」と予測している。すでに3人に2人(世界は67%、日本は33%)が旅行のいずれかの段階でAIを活用しており、その多くが旅行の計画や予約時(世界は98%、日本は97%)、あるいは旅行中(世界は96%、日本は88%)にAIを利用していると回答している。
旅行の計画段階では、目的地や最適な時期の調査(世界は38%、日本は34%)、現地での体験や文化的なアクティビティの探索(世界は37%、日本は35%)、レストランのおすすめ情報(世界は36%、日本は38%)などでAIが活用されている。また、AIアシスタントは旅行計画における信頼できる情報源として24%(日本は10%)の支持を得ており、同僚(世界は19%、日本は12%)やインフルエンサー(世界は14%、日本は9%)を上回る結果となった。
旅行者の66%(日本は44%)がAIによって旅がより簡単かつ効率的になることを主な利点として認識しており、混雑した観光地や旅行のピーク時を避けるためのAIによる提案も71%(日本は65%)が高く評価している。さらに、60%(日本は35%)が「その地域にポジティブな影響をもたらすような体験をAIが推薦してくれること」を望んでおり、AIの活用が旅の質だけでなく、地域への配慮や社会的責任にも及ぶことが期待されている。
ブッキング・ドットコムの最高業務責任者(COO)であるジェームス・ウォーターズ氏は、「生成AIは、現代における最も重要な技術革新のひとつであり、消費者が世界と関わる方法そのものを根本的に変える力を持っています」と述べ、同時に「信頼の構築、透明性の確保、そして安全性の担保は、旅行者と業界全体を未来へ導くうえで欠かすことのできない要素となっています」と強調している。




