
山下教授
台湾観光局(台湾政府観光署)は8月8・9日の2日間、帝京大学観光経営学科の山下晋一教授を講師に招き、「持続可能な経営×デジタルイノベーション」をテーマとした人材育成ワークショップを開いた。台湾の旅行会社とホテルの幹部22人が参加した。山下教授は元阿寒観光協会専務理事、元JAL日本航空台湾支社長。
参加者は台湾の観光を担う基幹要員として観光署から選抜された幹部であり、今回の研修プログラムは6月から計5日間の講義、2回計4日間のワークショップから構成されており、最後に8月29日から9月9日まで瀬戸内国際芸術祭、岡山・倉敷・大阪・宇治での持続可能な観光地域づくり研修、関西EXPOに参加し終了する予定だ。
北欧諸国を目標に掲げる参加者たち
ワークショップは台北市内の張榮發基金国際会議センターで行われ、旅行会社とホテル幹部らが4つのチームに分かれて議論した。台湾観光署からも5名がオブザーバーとして参加し、5つ目のチームとして参加した。
初日は各国の世界幸福度、一人当たりGDP、国際デジタル競争力、SDGs達成度などのランキングを比較検討。台湾の現状を把握した上で、各チームが目標とすべき国を選定した。いずれのチームも北欧4カ国を目標として挙げた。その後、山下教授が国際競争力や日本の観光立国政策について講義を行った。
午後からは礁渓、台南、花蘭、北投、台北信義区の5地域をテーマに、各チームがPESTEL分析とSWOT分析を実施。メンバー1人ひとりが担当を決めて発表し、活発な議論が展開された。
ワークショップ
DXと持続可能な観光地域づくりを統合
2日目はスマートシティとMaaS(Mobility as a Service)をテーマに、山下教授が講義を行った。スマートシティランキングでは東京が108位、大阪が99位であるのに対し、台湾は23位と優位に立っている現状を紹介。また高雄市のMaaSサービス「MenGo」の事例も取り上げられた。
その後、フィンランド、オーストラリア、ニュージーランド、ハワイ、京都のレスポンシブル・ツーリズム(責任ある観光)について各チームが調査・分析を行い、結果を発表。山下教授は持続可能な観光地域づくりと日本の観光立国政策について解説した。
午後のセッションでは、日本のDMO(観光地域づくり法人)の取り組みと世界のアドベンチャーツーリズムの動向について講義が行われた。各チームは前日のSWOT分析を修正し、DXと持続可能性の視点を加えたクロス分析を実施。最終的に各対象地域の戦略を立案し、発表した。
参加者たちは責任ある観光、DMOの取り組み、自動運転・MaaSを取り入れた戦略を提案。山下教授はその内容を高く評価した。ワークショップは参加者全員での記念撮影をもって終了した。
台湾観光署は観光業界の人材育成と国際競争力強化を目的に、今回のワークショップを企画。デジタル技術の活用と持続可能性を両立させる「ツイントランスフォーメーション」の考え方を広める機会となった。
山下教授